料理の作り方がわからない、注意力がない...「糖尿病性認知症」とは?

年齢とともに、物覚えが悪くなったり、人の名前が思い出せなくなったりすることは誰にでも起こります。しかし、認知症は「老化によるもの忘れ」とは異なり、何らかの病気によって脳の神経細胞が壊れるために起こる症状や状態を指します。
糖尿病とアルツハイマー型認知症の関係や予防法を、東京医科大学高齢総合医学分野(高齢診療科)主任教授の羽生春夫先生にお話をお伺いしました。

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前の記事「糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスクを上げる! 予防はどうする?(4)」はこちら。

 

血糖コントロールで一時的な認知機能改善も

糖尿病のある認知症患者の約1割に、アルツハイマー病変や脳血管病変がほとんど見られないケースがあります。これは糖尿病による糖代謝異常に伴う神経細胞障害が、認知症の発症に深く関わっていると考えられ、他の認知症と区別して「糖尿病性認知症」と呼ばれています。

特徴は、海馬(かいば)の萎縮があまり見られず、記憶障害が軽いこと。一方では脳の前頭葉の機能が低下してくるため、注意力や意欲が低下し、料理を作れないといった遂行機能障害が顕著に起こってきます。

羽生先生によれば、このタイプは糖尿病の病歴が長く、糖尿病のコントロールが悪い人に多くみられます。糖代謝異常が認知症に深く関わっているため、血糖コントロールをしっかり行うことで、一時的な認知機能の改善が期待できるそうです。

「もちろん記憶障害そのものは元には戻りませんが、進行自体は緩やかなので、うまくコントロールできればほぼ進行することなく過ごせることもあります。その意味で、糖尿病性認
知症はコントロールできる認知症ともいうことができます」(羽生先生)

【当てはまる項目があったら糖尿病性認知症かも】
 □糖尿病治療を数十年続けている
 □インスリン治療中だ
 □低血糖になり、入院治療したことがある
 □料理の作り方が分からない
 □注意力がなく、ぼんやりしている
 □もの忘れはあまり目立たない

 

●脳画像で分かる糖尿病性認知症
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上段のMRI画像では、アルツハイマー型認知症では明らかな海馬の萎縮が見られますが、糖尿病性認知症は健常者と比べてもあまり差がなく、ほとんど萎縮がありません。

一方、下段のアミロイドPET検査は、脳内のアミロイドβたんぱくの蓄積量を測定したもの。黄色や赤の部分が蓄積があることを示しています。アルツハイマー型認知症では明らかな蓄積が認められますが、糖尿病性認知症は黄色い部分がわずかで、あまり蓄積がみられないことが分かります。

 

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取材・文/佐藤あゆ美

 

 

<教えてくれた人>
羽生春夫(はにゅう・はるお)先生

医学博士。東京医科大学高齢総合医学分野(高齢診療科)主任教授。認知症疾患医療センター長として多くの認知症患者を診療している。専門は老年病学、神経内科学。著書に『認知症を予防する生活習慣』(メディカルトリビューン)。

この記事は『毎日が発見』2018年12月号に掲載の情報です。
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