過度な心配はいらない!「むち打ち症」は頚椎捻挫の一種/首の痛み

首は、約5㎏という人間の頭を支える関節の中でも重要な部位。そんな重い頭を支える首には、大きな負担がかかり、筋肉の疲労やストレスなどによって痛みが生じやすくなります。また、関節からの痛み、骨と骨の間にあるクッションの役割である椎間板からくる痛みのほか、内臓などの深刻な病気が隠れている場合もあるので、手足にしびれがある、眠れないほどの激痛がある、痛みが長引く、高熱を伴うといったときは、要注意です。

さまざまな首の痛みの症状やメカニズム、原因と治療、首の痛みに効果的な運動の方法などを、自治医科大学整形外科教授の竹下克志先生にお聞きしました。

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首の痛み以外にも症状はさまざま

交通事故やスポーツなどで起こる、いわゆる「むちうち症」は、頚椎捻挫(けいついねんざ)の一種です。車の追突事故のあとに首が痛くなった、頚椎に損傷がないのに首の痛みが続くなどの症状があり、格闘技や接触プレーのあるスポーツをしている人は要注意です。

交通事故などで追突されたときは、頚椎が過度に引き伸ばされた後、頭を前に振られて無理に曲げることになります。首がむちのようにしなることから、一般的に「むち打ち症」と呼ばれていますが、医学的には「頚椎捻挫」といわれています。

「主な症状は首の痛みですが、後頭部、首、肩、腕まで痛むこともあります。当日よりも翌日以降になって、症状が現れるてくる特徴があります。頭痛、めまい、吐き気、声のかすれ、頭痛、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状が出ることもあります」(竹下先生)

治るまでに3か月以上かかる場合もありますが、基本的にはいずれ治るものと考え、過度に不安になる必要はありません。

診断では、事故やスポーツ時の状況(事故の場合はどのような車両に乗っていたか、衝撃の方向、乗車位置、シートベルト着用の有無など)、症状、症状が出るまでの期間などが聞かれます。また、頚椎の症状及び神経学的検査が入念に行われるほか、エックス線検査やMRI検査といった画像検査が行われます。むち打ち症の場合はこれらの検査では異常が見られません。

治療は、痛み止めの非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)や筋弛緩薬などの内服薬を処方されます。急性期で痛みが強い場合は、頚椎カラーなどで首が動かないようにします。痛みが和らいできたら、首周辺の筋肉の増強訓練や、リハビリテーションを行います。事故による心理的な要因で長引く場合は、抗不安薬などが用いられる場合もあります。

「頚椎の外傷は脊髄損傷を起こすことがあります。最近は高齢者のちょっとした家の中での転倒事故でも、脊髄損傷を起こして手足が麻痺してしまうことがあります。軽度の事故でも、手足が思うように動かなくなってしまった場合は、すぐに整形外科を受診しましょう」(竹下先生)

 

頚椎以外の病気でも首や手の痛み、しびれが現れる病気があります。

●胸郭出口症候群
鎖骨と一番上の肋骨の間の隙間が狭くなって、神経や血管が圧迫されて腕や手のしびれ、肩や首のこりや痛みが出ます。腕を上げた状態で仕事をすることが多い人に見られる病気です。

●肩関節周囲炎
いわゆる「五十肩」で、肩関節の炎症によって激痛が走り、腕を動かすときだけでなく、安静時も痛みます。腕を上げたり、回したりすることが難しくなります。自然に治りますが、半年から1年半ほどの期間がかかります。

●腱板(けんばん)損傷
肩関節の周辺にある腱が切れ、肩を動かすと激しい痛みが起こり、腕を上げられなくなります。治療は、切れた腱板を縫い合わせる手術が主に行われます。

●絞扼性(こうやくせい)神経障害
脊髄から枝分かれした手足へ延びている神経経路のどこかが慢性的に圧迫されて、しびれや運動障害が起こる病気の総称。とくに多いのが親指から中指の手のひら側がしびれる手根管症候群と、ひじ関節の変形によってひじの内側で神経が圧迫される肘部(ちゅうぶ)管症候群です。

●糖尿病神経障害
糖尿病の合併症状として起こる神経障害で手足のしびれが現れることがあります。

●内臓などの病気によるもの
高血圧、低血圧、狭心症、更年期障害、貧血、自律神経失調症などが原因で、後頭部の筋肉痛や肩こりがみられることもある

●そのほかの原因によるもの
精神的緊張、睡眠不足、うつ状態、心理的不安、眼精疲労などが原因で、後頭部の筋肉痛や肩こりがみられることがある

 

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取材・文/古谷玲子(デコ)

 

竹下克志(たけした・かつし)先生

医師。自治医科大学整形外科教授。1987年東京大学医学部卒業、東京大学整形外科医局長、同大学医学部整形外科准教授などを経て、現職。脊椎(せきつい)外科(とくに側弯症)、痛み、バイオメカ、アウトカムを専門とする。著書に『そうだったのか!腰痛診療: エキスパートの診かた・考えかた・治しかた』(共著、南江堂)

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