骨粗鬆症が圧迫骨折の主原因。加齢で骨はもろくなるの?/圧迫骨折

骨粗鬆症が圧迫骨折の主原因。加齢で骨はもろくなるの?/圧迫骨折 pixta_10179826_S.jpg背骨は、首から腰まで24個の骨がつながってできていて、それぞれの骨の積み重なっている円筒形の部分を「椎体(ついたい)」といいます。圧迫骨折とは、この椎体が潰れてしまう骨折です。高齢の女性に多く、尻もちをつく、重い物を持つなどの大きな負荷、そして骨粗鬆症が主な原因です。背骨は体を支え、脊髄を保護する重要な役割を果たしています。この背骨が潰れてしまうと、強い痛みや日常生活への支障が出るほか、身長が縮んだり、背中が丸まったりして、見た目の老化にもつながります。

今回は圧迫骨折の症状や治療法、圧迫骨折の原因となる骨粗鬆症について、伊奈病院整形外科部長の石橋英明先生にお話を伺いました。

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常に生まれ変わる
骨代謝の仕組みとは?

圧迫骨折の主な原因は、骨粗鬆症です。ですから、もっとも大事なのは、骨粗鬆症の予防です。そこで、まずは骨についての基礎知識を知りましょう。

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人の体には約200個の骨があり、大きさや長さ、形も多種多様です。背骨、つまり脊椎(せきつい)は、上から頸椎(けいつい)7個、胸椎(きょうつい)12個、腰椎(ようつい)5個があり、その下は骨盤です。

「実は骨には、皮質骨(ひしつこつ)と海綿骨(かいめんこつ)という2種類があります。皮質骨は、硬くてきわめて強い骨。年齢を経ても弱くなりにくい特徴をもちます。例えば、手足の骨の棒状の部分はすべて皮質骨です。海綿骨は、皮質骨に比べて柔らかく、スポンジが硬くなったような骨のことで、加齢と共にもろくなりやすい特徴があります。背骨やかかと、手首、脚や腕の付け根などが該当します」と、石橋先生。

では、なぜ皮質骨は年齢を重ねても弱くなりにくく、海綿骨は弱くなりやすいのでしょうか? 骨は常に休むことなく古い骨を壊して新しい骨を作る新陳代謝を行っています。骨の約10%は1年で生まれ変わり、7年で約半分の骨が新しくなります。この骨が作り替えられる作業を、骨代謝といいます。

骨代謝は「破骨(はこつ)細胞」と「骨芽(こつが)細胞」という2つの細胞が担当しています。破骨細胞は血液系の細胞の一種で、古くなった骨を酸や酵素で溶かします。この過程を「骨吸収」といいます。骨吸収で骨が溶かされて小さなくぼみができると、骨を作る骨芽細胞が集まってきて、コラーゲンを分泌し、石灰分を沈着させて骨を形成します。これを「骨形成」と呼びます。

骨吸収と骨形成のサイクルは3~4カ月で完了し、全身の骨の表面で常に続けられています。特に海綿骨では、スポンジの目の表面がすべて「骨の表面」ということになり、膨大な数の破骨細胞、骨芽細胞が存在する訳です。その結果、骨代謝のスピードが早くなる訳です。骨吸収と骨形成のバランスが崩れると骨が弱くなり、特に骨代謝のスピードが速い海綿骨の部位、つまり背骨や腕や脚の付け根、手首などが骨粗鬆症になりやすく、つまり骨折しやすいのです。

 

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取材・文/笑(寳田真由美)

 

 

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石橋英明(いしばし・ひであき)先生

伊奈病院整形外科部長、NPO法人高齢者運動器疾患研究所代表理事。1988年東京大学医学部医学科卒業。三井記念病院、東京都老人医療センター(現・東京都健康長寿医療センター)整形外科などの勤務を経て、1992年より東京大学大学院医学系研究科にて骨代謝研究に従事。1996年に博士学位を取得し、米国ワシントン大学医学部に留学。帰国後、東京都老人医療センター整形外科に勤務、2001年より同センター整形外科医長。2004年より現職。専門は骨粗鬆症、関節リウマチ、関節外科。著書に『よくわかる最新医学 骨粗鬆症 予防・検査・治療のすべてがわかる本』(主婦の友社)、『骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(共著)』(ライフサイエンス出版)ほか。

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