ピロリ菌を除菌後も胃がんのリスクは高い。年1回は内視鏡検査を/胃の不調

ピロリ菌を除菌後も胃がんのリスクは高い。年1回は内視鏡検査を/胃の不調 pixta_20650425_S.jpg「食欲がない」「胃がもたれる」「胃がキリキリと痛む」......誰もが一度ならず経験があるのではないでしょうか。胃の調子は健康のバロメーター。不調であれば、「食べた物が悪かった?」「それともストレスが大き過ぎた?」と考え、食べる量を控えるなどして、胃の健康を保とうとします。なぜ、胃の調子は悪くなってしまうのでしょう。しょっちゅう起こる胃痛や胸やけから、胃食道逆流症、胃潰瘍や胃がんまで、兵庫医科大学病院副病院長の三輪洋人先生にお聞きしました。

前の記事「ピロリ菌の感染で胃がんのリスクは5倍。年齢が高いほど注意!/胃の不調(6)」はこちら。

 

長年のピロリ菌保持で萎縮性胃炎に

胃の中にピロリ菌が見つかった場合には、治療としてピロリ菌の除菌を行います。2種類の抗菌薬と胃酸の分泌を抑える薬1種類を1週間服用します。その間、アルコールはを飲むことができません。

この治療で8~9割の人が除菌に成功します。再度検査をして、除菌できなかったことが判明した場合には、別の薬を使用して2回目の除菌治療を行います。

「衛生環境が整っている現代、若い人にピロリ菌の感染者は少なく、10代では約10パーセントです。ピロリ菌に感染している年配者が、赤ちゃんに口移しで食べ物を与えた場合の感染を気にする人もいますが、ピロリ菌が赤ちゃんの口に1匹程度入ったとしても、その少なさで胃に住み着く感染に至る可能性は非常に低いと考えられます。

15~20歳で感染していなければ、その後にピロリ菌に感染する可能性はほとんどないので、20~30歳くらいまでに一度、ピロリ菌検査を受けておくとよいでしょう。

初めての検査は、早ければ早い方が望ましいです。感染していた場合、若いうちに除菌できるのは大切なことです。なぜなら、ピロリ菌が長く胃に住み着いていれば、それだけ炎症が進んでしまうからです。長い時間をかけて胃の粘膜が萎縮して、すり切れた状態となります。それを『萎縮性胃炎』といいます。萎縮性胃炎は、『胃がんの準備状態』と考えてよいでしょう」と三輪先生。

例えば、40歳でピロリ菌を見つけて、その後に除菌をすれば、ピロリ菌に感染していた期間は20~40年と考えられ、相当、萎縮性胃炎が進んでいます。ピロリ菌の除菌によって胃潰瘍のリスクは減りますが、胃がんについては決して安心できないのです。

「中年以上でピロリ菌が見つかった人は、胃がんのリスクを小さくするためにも、年に1度は内視鏡検査を受けることを勧めます。ピロリ菌に感染したことがない人、または早い段階で除菌していた人は、頻繁に内視鏡検査を受ける必要はありません」(三輪先生)

 
胃潰瘍の原因第2位は痛み止めの薬

胃潰瘍の原因の7、8割がピロリ菌です。残り2、3割の原因であり、最近増えているのは、痛み止めなどに使われている、非ステロイド性抗炎症薬、 NSAIDs(エヌセイズ)の副作用です。

NSAIDsには、抗炎症・鎮痛・解熱作用があり、変形性関節症やリウマチ、かぜや頭痛の場合に、医師から処方されます。心筋梗塞や脳梗塞の再発予防のための「低用量アスピリン」もそのひとつです。市販薬にもある「ロキソニン」も該当します。

このように様々な病気の治療に使われ、また、簡単に入手することもできるNSAIDsですが、胃潰瘍の防御機能を抑える働きがあり、使い続けると、胃潰瘍のリスクが10倍になると考えられています。

NSAIDsを服用しても胃潰瘍になりにくい人もいますが、過去に胃潰瘍になったことがある人や高齢者、また、ピロリ菌に感染している人は注意が必要です。NSAIDs自体に痛み止めの効果があるため、胃潰瘍による痛みを自覚できず、重症になってからわかるケースも少なくありません。長期間飲んでいる場合には、医師と相談して、適切に胃の検査を受けることが大切です。

 

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取材・文/三村路子

 

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三輪洋人(みわ・ひろと)先生

兵庫医科大学理事・副学長。兵庫医科大学病院副病院長。内科学消化管科主任教授。1982年、鹿児島大学医学部卒業。医学博士。専門は、消化器内科一般のほか、特に逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、ピロリ感染症の診断と治療、また内視鏡による胃がんの早期診断と化学療法。著書に『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)ほか。

(参考資料)
『「胃もたれ・胸やけ」は治せる 機能性ディスペプシア・胃食道逆流症・慢性胃炎』(NHK出版)
日本消化器病学会ガイドライン 
・厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(2016年)

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