最近注目を集めているフットケア外来とは?/足の爪の変形

最近注目を集めているフットケア外来とは?/足の爪の変形 pixta_41080101_S.jpg普段はあまり気にすることのない、足の爪。小さなパーツですが、変形したり、色が変わったりしていませんか? 巻き爪をはじめとする足の爪の異常は、実は歩き方や姿勢などの生活習慣や外反母趾など、さまざまな要因の積み重ねから複合的に起こっているもの。大したことないと思っていると、やがて強い痛みを伴い、歩行困難にもつながるので、注意が必要です。

さまざまな足の爪の異常やその原因、正しいセルフケアの方法を、皮膚科医で、「日本フットケア学会」の理事も務める高山かおる先生にお聞きしました。

前の記事「負担をかけない歩き方で足と爪を自分でケア/足の爪の変形(14)」はこちら。

 

何歳になっても自分の足で歩けるために

近ごろ、「フットケア外来」という専門外来を設ける医療機関が増えてきました。いったいどんな治療を行っているところなのでしょうか。

「『フットケア』というと、リラクゼーションのための足浴やフットマッサージ、ネイルケアなどをイメージすることが多いですが、医療行為としての『フットケア』は、足本来の機能を回復させるためのケアが目的です」と、高山先生。

具体的には、「外反母趾(がいはんぼし)」など足の骨の変形、「巻き爪」や「陥入爪(かんにゅうそう)」、「肥厚爪(ひこうそう)」など足の爪の異常、タコ・ウオノメ、水虫など不快な足の症状に根治的・保存的な治療を行い、健康な状態で少しでも長く自分の足で歩けるように足を守ることが目的だといいます。

単なる治療だけでなく、足から全身を診ることも必要とされ、予防やセルフケアの指導にも力を注いでいます。

足の爪、また足は全身を支える重要な土台です。「足本来の機能を見直すことで、足のトラブルだけでなく、全身の病気を予防・改善する」という考え方が、最近では浸透しつつあるようです。

厚生労働省もその重要性に注目しており、2003年度から、高齢者が要介護状態にならない生活を支援する「介護予防・地域支え合い事業」に「足指・爪のケアに関する事業」が盛り込まれています。

もともと日本のフットケア外来は、糖尿病患者の足を守るケアから始まったものでした。糖尿病の合併症では、潰瘍や壊疽から足や指を切断することがあります。その主な原因となるのは、靴ずれやタコ、爪の変形、水虫といったささいな足の病変ですが、あまりにささいなことだと思われて、本人も気づかないうちに重症化してしまうことが多くありました。
これを放置せず、足の疾患に根治的なアプローチができるようにと、フットケア外来が立ち上げられたのです。

足や爪のトラブルは糖尿病患者に限った問題ではありません。若い女性や高齢者など誰にでも起こり得る問題でもあり、フットケア外来のニーズも年々高まっています。
高山先生の調査では、20代の女性の約75%に何らかの足の異常があることがわかっています。また、厚生労働省の調査では、高齢者の50%以上に「外反母趾」や「巻き爪」、「肥厚爪」といった足のトラブルがあり、自立歩行の妨げになっていることが想像できます。

足や爪のトラブルの要因は多岐にわたるため、フットケアの治療ではさまざまな角度からアプローチをします。皮膚科、形成外科、内科、血管外科、整形外科などの専門医をはじめ、患者を直接ケアする看護師、理学療法士、栄養士、さらに歩行を指導する健康運動指導士などが連携して、総合的な治療を行うのが特徴です。

「フットケア外来」は、大学病院や総合病院などで設けられていることが多く、少しずつ増えつつありますが、まだまだ十分な数とはいえず、今後に期待されています。
「フット外来」「足外来」「爪外来」という名前であったり、整形外科などの医院が「巻き爪外来」などを設けて、巻き爪の治療を専門に行っていたりする場合もあるので、近隣の病院を調べてみるといいでしょう。

「フットケア外来」は足や爪にトラブルを持つ人にとっては大変心強いものですが、「『巻き爪』をはじめとする異変のほとんどは、自分で行うセルフケアである程度防ぐことができます」と高山先生は言います。正しい爪の切り方や足の洗い方、靴の選び方などをマスターして、まずは自分で予防することも大切です。

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取材・文/岡田知子(BLOOM)

 

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高山かおる(たかやま・かおる)先生

医師・医学博士。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学臨床准教授。接触性皮膚炎、フットケアを専門とする。難治性の巻き爪、陥入爪、肥厚爪などの疾患に対し、トラブルの根治を目指した原因の追求、診察、専門治療のほか、セルフケアの指導を行う。「100歳まで自分の足で歩ける社会」を目的に発足した「足育研究会」の代表、日本フットケア学会の理事を務め、フットケアの啓発活動も行っている。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』(マキノ出版)、監修に『皮膚科医が教える本当に正しい足のケア』(家の光協会)

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