高齢者でも必ず治療は必要ですか? 白癬菌治療のQ&A/白癬菌

高齢者でも必ず治療は必要ですか? 白癬菌治療のQ&A/白癬菌 pixta_31639708_S.jpg足の指の間がかゆい、水ぶくれができる、皮がむける...これらはすべて水虫の症状です。日本人の5人に1人が水虫に感染しているといわれています。水虫の原因は「白癬菌(はくせんきん)」というカビ(真菌・しんきん)です。白癬菌による感染症を「白癬」といい、実はこのカビ、足だけでなく手や頭など体のいろいろなところに棲みつくことができるのです。

そんな白癬菌の性質や特徴、治療法や予防法を、白癬治療の第一人者、仲皮フ科クリニック院長の仲 弥先生に伺いました。

前の記事「白癬菌に感染しやすいのは汗をかきやすい人、そして足の指が太い人です/白癬菌(15)」はこちら。

 

内服薬へのいろいろな不安にお答えします

白癬は治療をするのが望ましいですが、健康状態などによりそれが難しい場合があります。また内服薬での治療の場合は副作用など不安なことも多いでしょう。患者さんから多い、治療に関する質問にお答えします。

 

:介護中の祖父が爪白癬です。治療した方がよいでしょうか。

:高齢の場合は状態により、治療を見送ることもあります。
爪白癬の治療は主に内服薬ですが、強い副作用や併用できない薬があります。健康な高齢者であれば治療をした方がよいですが、体力が落ちていたり、他の病気のための薬を飲んでいたりすると、内服薬による治療は行えないケースが多々あります。しかし、爪白癬はただちに死に直結するような病気ではありません。副作用によるリスクをとるよりも、爪白癬の完治を目指さないという選択は間違いではないのです。

他の部位に感染しないように爪に外用薬を塗ったり、家庭内で他の人に感染しないための予防をしましょう。

 

:飲み薬で爪を治療できることに驚きがあります。成分はどのように爪に届くのですか?

:血流にのって爪に届きます。
酸素や栄養と同じように、薬の成分も血流にのって患部に運ばれます。爪には血管はありませんが、爪の根元にあり爪をつくる「爪母(そうぼ)」や、爪の下にある皮下組織の一部の「爪床(そうしょう)」には血管が通っています。ここから有効成分が爪に浸透し、白癬菌を退治してくれるのです。

 

:内服薬の副作用にはどのようなものがありますか。

:胃部不快感、下痢などさまざまな症状があります。
抗真菌内服薬の副作用は、主なものに胃部不快感、下痢、悪心(おしん・嘔吐を伴うような吐き気)、腹痛などの消化器系の症状があります。他に頭痛、発疹などが見られる場合や、肝機能に影響が見られる場合もあります。

内服薬での治療には副作用の有無を調べるため、投薬前や投薬中に定期的な血液検査が欠かせないことがあります。持病で飲んでいる薬や体調のことなどは事前に医師に伝え、治療途中でも体調に不安が出たときはすぐに医師に相談しましょう。

 

:糖尿病は水虫が悪化しやすいと聞きましたが本当ですか?

:免疫力が低下するため、治りにくくなります。
糖尿病は免疫力が落ちて水虫が治りにくくなります。また、かゆいからと皮膚をかきすぎていると傷ができ、そこから細菌が入って二次感染を起こしやすくなります。

糖尿病による知覚異常がある場合は細菌感染に気付かないことが多く、重症化することもあります。糖尿病の方が水虫になった場合は、日ごろから経過をよく観察し、足をよく乾燥させ、きつい靴や靴下は避けるようにしてください。少しでも異常を感じたときは皮膚科に相談しましょう。

 

:妊娠中も足の水虫の治療はできますか?

:外用薬による治療は可能です。妊娠中は内服薬による治療はできませんので、医師に妊娠をきちんと伝えてください。外用薬による治療はできますので、他の人へ感染を防ぐためにも外用薬をつけましょう。出産し、授乳期を終えれば内服薬による治療は可能です。

 

:冬も白癬の治療が必要ですか?

:冬は水虫退治のチャンスです。水虫を再発する人には「冬になると治るのに、春から夏にかけて再発する」という人が多いのではないでしょうか。それは"白癬菌は高温多湿な場所を好む"という性質のせいかもしれません。

冬になって気温が低く乾燥した季節になると、白癬菌の活動は衰えます。そのためかゆみなどの症状がなくなり"治った"と錯覚してしまうのです。しかし白癬菌は気温の低い冬は眠っているだけで、死滅したわけではないのです。春になり、気温が上がってくると徐々に症状が出てくるのはそのためです。活動が弱まっているときに薬を塗れば効果が上がり、より大きなダメージを白癬菌に与えられるのです。

 

取材・文/ほなみかおり

高齢者でも必ず治療は必要ですか? 白癬菌治療のQ&A/白癬菌 さん
仲 弥(なか・わたる)先生

慶應義塾大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部皮膚科医長、同・皮膚科専任講師を経て、1996年に仲皮フ科クリニック(埼玉県川越市)を開業。真菌のエキスパートとしてメディアに多数出演。埼玉県皮膚科医会会長、日本臨床皮膚科医会参与(前副会長)、日本皮膚科学会代議員、埼玉県皮膚科治療学会理事、日本医真菌学会評議員、日本皮膚科学会認定専門医。

 

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