ガン治療には「免疫システム」が必要不可欠! 仕組みと関係を専門医が簡単解説

いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。

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ガンが治る人 ガンに対する免疫のはたらきが強い/ガンが治らない人 ガンに対する免疫のはたらきが弱い

私たちの体は約37兆個の細胞からできており、つねに新しい細胞分裂によって生み出されています。

細胞が分裂するときには、遺伝子が正しくコピーされ、引き継がれなければなりませんが、毎日、数千個の細胞では、遺伝子の変異とよばれる〝コピーミス〟がおこるといわれています。

ガンは、細胞の増殖や死に関わる遺伝子に、このコピーミスが重なった結果生まれます。

したがって、遺伝子にコピーミスをもつ細胞の一部は放っておくとガンになる可能性があります。

しかし、健康な人は、常に体内をパトロールしている監視細胞が、この異常な細胞を見つけて殺しているので、ガンにならずにすんでいるのです。

この、異物(ここではガン)と戦う体のシステムを「免疫」と呼びます。

では、ガン細胞を監視し、排除する免疫のはたらきについて、簡単に解説していきましょう。

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まず、最初にガンに攻撃を仕掛けるのは、リンパ球の一種であるナチュラルキラー細胞(以下、NK細胞)です。

このNK細胞が血液にのって全身をパトロールし、ガン細胞を見つけては除去しています。

次に、弱ったガン細胞のまわりを抗原提示細胞と呼ばれるマクロファージや樹状細胞が取り囲み、ガンの断片や目印(抗原)を捕獲します。

樹状細胞は、ガン細胞の特徴(抗原)をヘルパーT細胞に知らせる役目をもっています。

ヘルパーT細胞は、いわばガン攻撃の司令塔としてはたらきます。

ガンの存在を知ったヘルパーT細胞は、活性化して増殖を始めます。

そして、B細胞に攻撃の指示を出し、武器である抗体をつくらせます。

一方、ヘルパーT細胞は、キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)にも命令し、ガンを直接攻撃させます。

このように、初期にはNK細胞、その後はT細胞など、さまざまな免疫細胞が協力し、ガンの発生や進行を防いでいるのです。

ところが、何らかの原因によってこの免疫システムの機能が下がると、ガンが発生したり、ガンを治療しても再発したりすると考えられています。

これまでに報告された、免疫とガンとの密接な関係を示した代表的な研究結果をいくつか紹介します。

1.血液中のリンパ球のガン細胞を殺傷する能力(免疫活性)が高い人は、低い人に比べてガンを発症するリスクが低い。

2.切除したガンの組織中に、NK細胞やT細胞といった、免疫細胞が多く集まっている患者さんの生存期間は長く、逆に少ない患者さんは生存期間が短い。

血液中の免疫細胞の割合を調査したところ、免疫力が高いパターンのガン患者は、低いパターンの患者に比べ、抗ガン剤治療による生存期間があきらかに長い。

臓器移植を受けた患者は、免疫抑制剤というT細胞のはたらきを抑える薬を飲み続ける必要があるが、この患者にはガンの発生率が高い。

エイズなど免疫不全をともなう病気の患者には、ガン(肉腫など)が高率に発生する。

免疫のブレーキをはずす「免疫チェックポイント阻害剤」

免疫には、細胞が見境なく攻撃して暴走しないように、そのはたらきを抑制するシステムがあり、これを「免疫チェックポイント」と呼びます。

最近では、「オプジーボ」や「キイトルーダ」といった免疫チェックポイント阻害剤の登場により、ガン治療における免疫の重要性が再びクローズアップされました。

免疫チェックポイント阻害剤とは、このT細胞にかかった抑制をはずし、ガンに対する攻撃力を高める、というまったく新しい薬です。

これまでの免疫治療は、いかに免疫力を高めるか、つまり、「アクセルをふかす」ことで免疫のはたらきを加速することが目標でしたが、この免疫チェックポイント阻害剤は、免疫の「ブレーキをはずす」ことでスピードを上げるという考え方です。

免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験では、これまで標準治療として使われていた抗ガン剤の成績をはるかに上まわる治療成績を示したり、他の治療が効かなかった進行ガン患者の腫瘍が完全に消えたりという衝撃的な報告もありました。

また、通常の抗ガン剤治療と違い、免疫治療はいったん効果がでると、比較的長期間にわたって持続するという特徴があります。

今では、皮膚ガン(メラノーマ)や肺ガンをはじめ、多くのガンに対する効果が証明され、ますます期待が高まっています。

このように、多くの研究結果から、免疫力は、ガンの発生や進行を抑えるために必要不可欠であることが示されています。

もちろん、免疫のシステムは非常に複雑で、単純に免疫力を高めればガンが治るというものでもありません。

しかし、多くの研究により、心の持ちかた、食事、運動などによって免疫力を高めることができ、ガン治療をサポートできることが証明されています。

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068-ganga-syoei.jpg心構えや情報収集のやり方などが全5章で解説。治療法ではなく、がんを治すために自分でやれることがまとめられています

 

佐藤典宏(さとう・のりひろ)

1968年、福岡県出身。産業医科大学第1外科講師、外来医長。九州大学医学部卒。日本外科学会、日本消化器外科学会専門医・指導医。がんの分子生物学を研究し、外科医として膵臓がんを中心に1000例以上の外科手術を経験。ブログ「がんをあきらめない人の情報ブログ」は月間10万PVを超える。

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『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』

(佐藤典宏/あさ出版)

がんが「治る人」には傾向がある? 多くのがん患者にかかわってきた専門医が見いだしたのは、回復に結び付くために必要となる「5つの力」。著者が携わった症例や最新の研究結果を交えながら、がん克服に必要となる能力を高める方法を解説。「治る人」になるために必読の1冊です。

※この記事は『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(佐藤典宏/あさ出版)からの抜粋です。
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