いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。
ガンが治る人 いつも最良のシナリオを心に描く/ガンが治らない人 いつも最悪のシナリオを心に描く
ガンの告知を受けたほとんどの人が、〝死〟を意識します。
たとえ早期ガンであっても、死のイメージがつきまといます。
進行ガンではなおさらです。
これは、昔からある「ガン=死」という、誤った固定観念のせいでしょう。
たしかに、有効な治療法が少なかった時代には、ガンは死の病でした。
ガンになったドラマの主人公は必ず最後には死にますし、ガン闘病を告白した有名人が数ヶ月後には死亡した、というニュースが流れることもめずらしくありません。
たとえ主治医から「治療がうまくいけば、治る可能性が高い」と言われたとしても、ガン患者さんはつねに最悪のシナリオを考えがちです。
なかには最悪の事態も想定し、心の準備をしておきたいと思う人がいるかもしれません。
確かに準備は大切です。
しかし、このような最悪のシナリオは、誤ったガンのイメージや患者さんの思い込みにもとづいており、取り越し苦労のことが多いのです。
ガン患者の6割近くは治る
最近は医療の進歩でガンの治療成績が格段に向上し、「ガン=死」はすでに過去のものになりつつあります。
国立がん研究センターによる最新のデータでは、ガン患者全体の5年生存率はおよそ70%、10年生存率は60%近くまで向上している、という結果でした。
つまり、ガン患者さんの6割近くは治るということです。
今や「ガン=治る病気」、あるいは「ガン=長生きできる病気」とさえ言える時代なのです。
また、「ガンになると必ず痛みに苦しむ」といった誤解がありますが、ガンはそれ自体は痛みません。
ガンが大きくなって神経を圧迫したり、骨に転移したり、あるいは臓器を巻き込んでトラブルをおこしたりした場合にだけ、痛みがでてきます。
もし、痛みがでたとしても、大丈夫です。
鎮痛剤の進歩で、ガンの痛みはほぼ完全にコントロールできるまでになりました。
最近では、ガンの痛みに対しては「オピオイド」という医療用の麻薬を使います。
「麻薬を使うと中毒になる」、「麻薬を使うと寿命が短くなる」、あるいは「麻薬を使う=末期」と思う患者さんが多いのですが、これらはすべて誤解です。
適切に使えば、中毒になることはほとんどなく、寿命が短くなることもありません。
また、ガンの早期でも痛みの強さに応じて麻薬を使うこともあるのです。
「痛み苦しみながら死んでいく」というガンのイメージも、今や現実からかけ離れたものなのです。
「望まないこと」を考えると現実になる
少しスピリチュアルな話に感じるかもしれませんが、「望まないこと」ばかりを考えているとそれが現実になることが、脳科学的にも証明されています。
『自動的に夢がかなっていく ブレイン・プログラミング』(サンマーク出版)によると、脳には入ってくる情報をふるいわけて、意識を向ける優先順位を決める、脳幹網様体賦活系、通称「RAS(Reticular Activating System)」という仕組みがあるといいます。
「望まないこと」ばかりを考えていると、RASはその「望まないこと」を探し続けることになります。
その結果、まさに最悪の事態が引きおこされるというわけです。
逆に、「望むこと」だけを考えると、RASは「望むこと」が現実になるまで全力で探し続けるのです。
たとえば、ある高級スポーツカーがほしくなったとします。
すると、路上を走っているとき、必ずそのスポーツカーが目につくようになります。
とはいえ、急にそのスポーツカーが増えたわけではありません。
「このスポーツカーを買いたい」と望むことで、RASが意識を全面的にそのスポーツカーだけに向かわせ、それ以外の車を無視するからなのです。
だから、ガンのことを考えたとしても、心から望む最良のシナリオを描きましょう。
たとえば、
「手術が成功して、ガンが完全に治る」
「抗ガン剤が効き、ガンが消滅する」
「5年生存率が10%と言われたが、その10%に入って長生きする」
「ガンを克服して、毎年、家族と海外旅行に出かける」
「ガンが完全に治って、仕事をバリバリこなしている」
「ガンを克服して、第二の人生を趣味に生きる」
といったことです。
先ほど紹介した本の著者の1人、アラン・ピーズは、47歳のときに進行性の前立腺ガンと診断されます。
手術でガンがすべて取りきれず、医師から「余命は約3年で、生き残る人はわずか3%」と言われます。
しかし、彼は「先生、私はその3%のグループに入ることにします!」と宣言し、RASにガンが治った自分を書き込みます。
その結果、彼はガンを克服し、今まで16年間以上も生きることができたのです。
たとえ進行ガンで、統計的には生存率が低いとしても、"生き残る"と脳をプログラミングすることで現実になることを、自ら証明してみせたわけです。
だから、ガンになってもつねに前を向き、希望をもって毎日を過ごし、最悪のシナリオではなく、心から望む最もよいシナリオを心に描き続けましょう。
手術数1000件超の専門医が伝えたい「がんが治る人 治らない人」記事リストはこちら!
心構えや情報収集のやり方などが全5章で解説。治療法ではなく、がんを治すために自分でやれることがまとめられています