いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。
ガンが治る人 まわりの人を頼り、感謝できる/ガンが治らない人 まわりの人に相談せず、1人で抱え込む
人間は1人では生きていけません。
ガンを克服するには、患者1人の力だけでなく、まわりの多くの人の支えが必要です。
しかし、なかには、「家族やまわりの人に、心配や迷惑をかけたくない」という患者さんがいるかもしれません。
あなたのまわりを見渡してみましょう。
家族やまわりの人も、きっと患者さんの役に立ちたいと思っています。
最も頼りになる応援団は家族です。ときには甘えることも必要です。
愛する家族、特に配偶者(妻や夫)や子ども、あるいは孫がいることは、「絶対に生きよう」という気持ちを高め、ガンを克服するための勇気やパワーになります。
多くの研究で、配偶者がいるガン患者は、未婚または配偶者と死別した独身のガン患者に比べて死亡リスクが下がり、より長く生きることが報告されています。
支えてくれる家族がいることに感謝しましょう。
ガン自然寛解の研究で有名な、米国のケリー・ターナー博士は、著書『がんが自然に治る生き方』(プレジデント社)のなかで、ステージ4を含めたガンが劇的に治った「ガンサバイバー」が実行していた9つのことを紹介しています。
このなかの1つに、「周囲の人の支え(サポート)を受け入れる」というのがあります。
これは、大切な人に〝愛されている〟と実感することで、免疫システムのはたらきが向上し、ガンなど病気の治癒をうながす効果がある、ということです。
逆に、まわりに支えてくれる人がいないと感じる「孤独感」が、ガンの死亡率を高めるというデータも紹介しています。
ただし、ガンになったからといって、家庭での役割や仕事をすべて放棄したり、家族に押しつけたりしていい、ということではありません。
どんな状況でも、自分が家族のために役に立っている、あるいは家族に必要とされているという気持ちが大切です。
家庭での自分の役割はできるだけ放棄せず、自分でできることは続けましょう。
ガンになっても仕事を辞めなくていい
ガンになると、今までと同じように職場で働けなくなる場合があります。
ガンになって仕事を辞めてしまう人がいますが、できるかぎり仕事は続けたほうがいいと思います。
仕事が生きがいになることもありますし、職場の仲間とのコミュニケーションが精神的な支えになることもあります。
また、ガンの治療にはお金がかかります。
経済的にも収入源を持ち続けることも大切です。
ガンになっても働ける社会を目指し、厚生労働省は2016年、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表しました。
これからは、ガン患者さんが治療と仕事を両立できるよう、企業をはじめ社会全体で支援する時代がくると思われます。
上司や人事部、あるいは産業医に相談し、仕事の時間や量を調整してもらいましょう。
この場合も、できないことや手伝ってほしいことははっきりと伝え、職場のまわりの人に甘えることも大切です。
もちろん、感謝の気持ちを伝えることは忘れないでください。
また、ガンについてのさまざまな悩み、治療、生活、仕事、お金に関する質問は、「がん相談支援センター」、日本対がん協会の「がん相談ホットライン(03-3541-7830)」に相談してみましょう。
利用できるものは何でも利用して、ガンの不安を減らしていきましょう。
不安や悩みを抱えたままではガン治療に専念できませんし、治療もうまくいかない可能性があります。
とにかく、心配なことはなんでも相談することです。
ガンを克服するためには、だれかに助けを求めることも大切なことです。
自分1人で抱え込まないで、「みんなに協力してもらって一緒にガンを治す」と考えましょう。
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心構えや情報収集のやり方などが全5章で解説。治療法ではなく、がんを治すために自分でやれることがまとめられています