新緑の季節はお出かけの機会が増える一方で紫外線量が急激に高まる時期。真夏だけでなく春から初夏にかけても、紫外線対策が重要です。そこで今回は、日本医科大学医学部皮膚科教授船坂陽子(ふなさか・ようこ)先生に「しみを遠ざける生活習慣&治療法」についてお聞きしました。
【前回】まず「しみ」ができやすいかセルフチェック! 春から夏にかけては紫外線対策と肌ケアを
紫外線防止では素材選びも大切
コロナ対策で習慣化されたマスクを着用していると、つい化粧は二の次、日焼け止めも不使用といったことは起こりがちです。
しかしマスクの素材によっては紫外線を通してしまうことがあるので注意しましょう。
紫外線対策を意識するならば、「UVカットマスク」を活用するのが有効です。
「日焼け止めはSPFとPAの値が高いものを活用してください。日焼け止め対策をしても、それが汗で流れてしまうと、あまり効果が望めません。最近は、ファンデーションの上からスプレーできる日焼け止めもあります。外出先でもこまめに日焼け止めを塗り直してください」と船坂先生は話します。
日傘の色も紫外線の吸収率を考えて選ぶのがコツです。
黒色は紫外線を吸収しやすいため、日傘の外側は紫外線を反射しやすい白色、日傘の内側は、入り込んだ紫外線を吸収しやすい黒色を選ぶとよいそうです。
加えて、日傘を持つ手の甲にも対策を。
紫外線によるしみにならないように日焼け止めを塗りましょう。
「肌を守るには、汗ばむ季節も保湿剤を活用してください。肌がガサガサしていると表皮が傷つき、紫外線が肌の中に侵入しやすくなります。肌が滑らかになればよいので、ご自身にとって塗り心地がよいものを選びましょう」と船坂先生はアドバイスします。
加えて、抗酸化作用のあるビタミンCやポリフェノールを意識して摂るとよいそうです。
紫外線に伴って体内で発生する活性酸素に対し、抗酸化作用で防ぐことが期待できます。
ギザギザのしみは皮膚がんかも
自己対処でしみ予防はできますが、「しみが急に大きくなった」「黒っぽくて形が丸くなく変形している」といったしみには注意が必要です。
「形が不揃いで急に大きく濃くなってきたしみの中には、皮膚がんが隠れていることがあります。皮膚がんは早期段階では痛みがないため、しみと間違われやすい。皮膚がんが進行して転移すると治療も大変ですから、気になるしみが生じたときには専門医に相談してください」と船坂先生は警鐘を鳴らします。
専門医がダーモスコープという検査機器でしみを見ると、皮膚がんか否か、すぐに見分けがつくそうです。
また、仮に単なるしみだったとしても、しみの治療(自費診療)は近年非常に進化しています。
「老人性色素斑のレーザー治療は、沈着したメラニンを狙い撃ちにするQスイッチ付ルビーレーザーなど、非常に良い医療機器が開発されています。気になる方は専門医にご相談いただきたいと思います」と船坂先生。
しみが気になるときには医療機関へ。
適切な治療を受けることで病気から身を守り、美肌も維持することが可能です。
肌を守りましょう!
紫外線の種類
太陽光の波長によって赤外線や紫外線などの種類があり、波長によって紫外線もUVA(紫外線A波)やUVB(紫外線B波)などに分類されます。UVAは肌の奥まで届いて細胞にダメージを与え、UVBはさらに強く悪影響をもたらします。
SPFとPA
SPF(Sun Protection Factor)はUVBを防ぐ度合いを示し、PA(Protection Grade of UVA)はUVAを防ぐ度合いを示します。いずれも数値が高い方が効果があります。ただし、高い数値の製品も汗で流れてしまうと効果は下がります。
しみを遠ざける生活習慣&治療法
生活習慣
日焼け止めはSPFとPAの値が高いものを
外出先ではこまめに塗り直しましょう。汗で流れてしまった状態を放置しないことが大切です。
マスクは紫外線を通さないものを
マスクの素材によっては紫外線を通してしまいます。UVカットマスクを活用しましょう。
ビタミンC 、ポリフェノールを意識した食事を
ブロッコリー、キウイフルーツ、緑茶など抗酸化作用のある野菜、果物、飲料を意識して摂りましょう。外出前後に食べるのがおすすめです。
毎日の保湿剤も忘れずに
肌をツルツルにしておくとバリア機能が保たれます。お気に入りの保湿剤で入念にお手入れを。
その他に
顔のしみだけでなく手の甲のしみも増やさないように保湿や日焼け止めで手のケアも。
治療法
レーザー治療
沈着したメラニンを狙い撃ちにする医療機器があり、1回の治療でしみを消すことも可能です。
ケミカルピーリング
ダウンタイム(※)なく沈着したメラニンを早く排出し、美白剤と合わせることでしみを早期に薄くします。
その他にも
トレチノインやハイドロキノンなどの美白剤、トラネキサム酸やビタミンCなどの飲み薬もあります。
※施術を受けてから、通常の生活に戻る期間
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史