96歳の作家が危惧する「年々弱くなる男性と、強くなり過ぎな女性」/佐藤愛子さんインタビュー(3)

新しい時代・令和も元気に活躍されている90代の皆さん。
お生まれになったのは、大正や昭和一桁の時代です。
大正から昭和、平成、そして令和へとーー。数多くの経験に基づいたお話は参考にしたいことばかり。今回は、大正12年生まれ、作家の佐藤愛子さんに、いくつになっても日々はつらつと暮らすための考え方を伺いました。

前回の記事96歳の作家が神戸の教師イジメ事件に感じた「日本人の劣化」/佐藤愛子さんインタビュー(2)はこちら

2001p011_01.jpgターコイズブルーのセーターがよくお似合いの佐藤さん。
シニヨンのまとめ髪も、毎朝ご自分でなさるそうです。

心残りのない人生にするために苦しいことから逃げない

佐藤さんが最近危惧しているのが、年々男性が弱くなり、女性が強くなり過ぎていることだと言います。

「いまの若い夫は、奥さんに料理がマズイと言えないのね。テレビで見て驚きました。言わない理由は、妻が怒ると面倒だから。中には、奥さんに気付かれないように隙をみて、ふりかけをかけてご飯を食べているという男性もいました。でも、マズイものをマズイと言えないのは他人同士のことですよね。夫婦だから言えるんですよ。

男女雇用機会均等法ができ、女性も仕事を持つのが当たり前になってからは、女性が権利を主張し、批判をするようになりましたよね。それ以前は、自己主張すると出しゃばり、悪妻といわれた。とにかく従順ということが、第一の美徳として女に求められたんだけど、いまは逆転しましたね。それによって能力を伸ばす女性が増えたのはよろこばしいことだけど、主張が強くなり過ぎると往々にして客観性を失うので、それは気を付けた方がいいと思いますね」

客観性を持つことは、意識をすればできること。では、欲望や執着をなくし、心残りのない人生にしていくにはどうしたらいいのでしょう。

「私の経験では、苦しいことから逃げないことだと思いますね。亭主が作った借金だけど、こんな人に頭を下げるくらいなら、私が返してやる!と、アテがないのに損をひっかぶるとかね(笑)。向こう見ずな私は、そんなことばかりしてきましたから、物質に対する欲望や執着は、全くありません。逃げればいいのに、しなくてもいい苦労をする。腹が立ったら損得も考えず戦うという厄介な性格は、父の佐藤紅緑(こうろく)、兄で作詞家のサトウハチローも同じで、佐藤の家風なんです。

津軽藩の微禄な藩士だった祖父も、変人で有名だった人。藩内の武士に三十円を貸したが返却期限になっても返してもらえず、『お前の尻を蹴らせろ。1回蹴って十円だ』と、3回蹴って三十円の借金をチャラにしたという話が残っています。当時の三十円がどの程度の価値だったか分かりませんが、それで自分は貧乏生活をしているんだから、笑っちゃいますよ。損得勘定だけで生きていたら、欲望は尽きないと思うけれど、こういう家に生まれ、その血を継いで波瀾万丈で、自分でも面白い96年だったと思いますね」

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佐藤愛子(さとう・あいこ)さん

1923年大阪府生まれ。69年『戦いすんで日が暮れて』で直木賞、79年『幸福の絵』で女流文学賞、2000年『血脈』で菊池寛賞、15年 『晩鐘』で紫式部文学賞受賞。17年に旭日小綬章を受章し、エッセイ集『九十歳。何がめでたい』が大ベストセラーに。近著は『冥界からの電話」。

この記事は『毎日が発見』2020年1月号に掲載の情報です。

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