帯状疱疹患者の増加は今の社会を反映している!?今後も増え続ける帯状疱疹に対処するには/口内炎

口内炎とは、口内の粘膜にできる炎症の総称です。頬や唇の内側、舌、上あごなど口内のあらゆる粘膜に炎症を起こす可能性があり、食事をすることがつらくなったり、人と会話をすることがおっくうになったりするなど、痛みや不快感でQOL(生活の質)を低下させます。口内炎といっても原因はさまざま。それぞれ治療方法が違うので、原因に合った治療をすることが大切になります。

さまざまな口内炎の原因、症状、治療法、予防法などを、鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科准教授の中川洋一先生にお聞きしました。

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水痘ワクチンの接種で帯状疱疹が予防を

ウイルスの感染による口内炎のひとつに帯状疱疹があります。帯状疱疹は誰でもかかる可能性のあるありふれた病気ですが、辛い痛みを伴ううえ、重症化すると後遺症が残ることもあるので、できれば避けたい病気です。

1997年から2006年の10年間の調査で患者数は26%増えていることがわかっていますが、今後、高齢化とともに、ますます帯状疱疹の患者が増えることが予想されています。身近に発症している人がいると免疫は強化されますが、この帯状疱疹患者の増加傾向は、以下の社会的な背景により、以前と比べてウイルスに対する免疫が追加される機会が少ないことが理由としてあげられています。

・核家族化によって水ぼうそうにかかる孫との接触がなくなった
・2014年10月に小児水痘ワクチンが定期接種化されて以降、 水ぼうそうの子ども自体が減っている

「帯状疱疹は2度以上かかる人が増加しています。高齢者の場合は『帯状疱疹後神経痛』や『顔面神経麻痺』などの後遺症が残ることも多くなります。高額な抗ウイルス薬の使用や長期にわたる神経痛の治療の減少にワクチンが役に立つことが期待されています」(中川先生)

高齢と免疫の低下により、帯状疱疹が再発するケースは今後もさらに増えることが予想されます。2016年からは50歳以上を対象に承認された水痘ワクチンの接種で帯状疱疹を予防することが可能になりました。一度接種すれば10年程度の効果が期待できるので、かかりつけ医に相談してみましょう。

通常、ウイルス性の口内炎の場合は、抗ウイルス薬が使われますが、「帯状疱疹後神経痛」や「顔面神経麻痺」など重症化した場合は以下のような治療を行います。

・神経痛が残った場合は、内服薬(カルバマゼピン)や神経ブロック注射などを使用する
・顔面神経麻痺になった場合は、抗ウイルス薬に加えて、ステロイド薬を使用する

ウイルス性口内炎を生じる疾患には「ヘルパンギーナ」とよばれる急性ウイルス性咽頭炎があります。コクサッキーウイルスを原因とし、口の中の粘膜から喉に小さい水疱ができますが、破れやすいのでアフタ性口内炎に似た症状となります。

「乳幼児を中心に夏に流行しますが、大人にうつる場合もあります。喉や上あごにできるので飲み込む際に痛みを伴い、食事をすることが辛くなります。38℃以上の発熱を伴うことが多いです」(中川先生)

現時点では、コクサッキーウイルスに効果のある抗ウイルス薬はないので、解熱鎮痛剤などを使って発熱や痛みへの対処をするしかありません。

 

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取材・文/古谷玲子(デコ)

 

 

<教えてくれた人>

中川洋一(なかがわ・よういち)先生

鶴見大学歯学部附属病院口腔機能診療科准教授。1980年鶴見大学歯学部卒業。2002年同大学附属病院専門外来(現・口腔機能診療科)。日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医。著書に『チェアサイド・介護で役立つ口腔粘膜疾患アトラス』(クインテッセンス出版)などがある。

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