再発を繰り返す「単純ヘルペス」と痛みが強い「帯状疱疹」の見分け方/帯状疱疹

再発を繰り返す「単純ヘルペス」と痛みが強い「帯状疱疹」の見分け方/帯状疱疹 pixta_35928032_S.jpgある日、頭や背中、わき腹などの、体の左右どちらかの皮膚にピリピリした痛みを感じた後、赤い班や小水疱(水ぶくれ)が出てきた...急にそんな症状が出現したら戸惑うものです。実は、これが帯状疱疹(たいじょうほうしん)の典型的な症状。加齢や過労、病気、旅行に出かけて疲れがたまった時などに、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが再び活動し始めて起きる病気です。帯状疱疹の特徴や治療法、後遺症、他の病気との見分け方などについて、宇野皮膚科医院院長の漆畑先生にお話を聞きました。

前の記事「「単純ヘルペス」には角膜ヘルペス、性器ヘルペスなどがあります/帯状疱疹(13)」はこちら。

 

発症した場所と痛みが強いかどうかで見分けます

帯状疱疹のウイルスと、単純ヘルペスの2つのウイルスは、どれも一度、人間に感染すると、治ったあとも死滅しません。ウイルスは人間の体の神経節(神経細胞が集合して結節状になっている部分)に潜伏し続ける性質があることは、共通しています。また、何らかのきっかけで体の免疫力が弱まったときに、ウイルスが再び活性化して症状が現れることも同じです。

しかし、ウイルスが増殖しながら皮膚の表面へと移動するときの経過は、帯状疱疹と単純ヘルペスとでは異なります。

帯状疱疹では、ウイルスが神経節の神経細胞で増殖するのではなく、神経細胞の周りを囲んでいるサテライト細胞(神経細胞の周りで栄養補給や代謝を担う細胞)で増殖・感染を繰り返し、さらに神経線維の周りのシュワン細胞(神経線維をくるむように付着している細胞)に次々と感染しながら皮膚の表面に向かってゆっくりと移動していきます。ウイルスが活動しはじめてから皮膚の表面に到達するまでには2週間ほどかかりますが、その前に炎症が進むため、皮膚に皮疹(疱疹)が出る前に痛みを感じますし、その後の痛みも強いのです。また、皮疹(疱疹)が現れる体の部位は、神経に沿って体の左右のどちらかの半身に集中します。

単純ヘルペスのウイルスは、「1型」と「2型」のどちらのウイルスの場合も、神経細胞からひものように伸びている神経線維である『軸索(じくさく)』を通って、短時間で皮膚の表面に到達します。そして皮膚の表面の細胞に感染して疱疹を生じます。軸索はシュワン細胞が巻き付いた髄鞘(ずいしょう)という脂質にくるまれているので、ウイルスが軸索を通って皮膚まで移動する間、途中の細胞などにウイルスが接触することはありません。そのため、途中の細胞などが壊されることがほとんどないのです。単純ヘルペスにも痛みはありますが、帯状疱疹ほどの強い痛みを感じるケースが少ないのはそのためです。

「単純ヘルペスの症状が出る場所は、口の周りや角膜などの顔面、陰部、あるいは臀部です。ほかの部位に出ることはほとんどありません。また単純ヘルペスは何度も再発するので、そのうち患者本人も単純ヘルペスが起きる兆候が分かるようになります」と漆畑先生。

たまに、腰臀部や太ももに皮疹(疱疹)ができた場合は、単純ヘルペスか帯状疱疹かの見分けが難しいことがあります。受診して判断が難しいときは診断キットで判定します。帯状疱疹も単純ヘルペスも、ヘルペスウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」を主体とした治療を行います。

 

○帯状疱疹と単純ヘルペスの違いのまとめ

1 帯状疱疹
・皮疹(疱疹)が出る前にピリピリした痛みを感じる。
・皮疹(疱疹)が体の半身に出て皮膚の症状が重い。
・皮疹(疱疹)が出たあとも痛みが続く。
・以前は一度発症すると再度かかることはなかったが、現在は5~10年で2度目以降の発症が起こりうると考えられる。
・ 後遺症として「疱疹後神経痛」が残ることがある。
・ 他人にはほぼ感染しない。

2 単純ヘルペス
・ 症状が表れるのは口唇、角膜、性器、臀部などで、皮膚症状は軽い。
・ 臀部ヘルペスを除き、痛みはないかそれほど強くない。
・ 後遺症は残らないが、再発を何度も繰り返す。
・ 過去に単純ヘルペスに感染していない他人には感染する。

 

次の記事「気を付けたい!帯状疱疹から引き起こされる「ラムゼー・ハント症候群」などの合併症/帯状疱疹(15)」はこちら。

取材・文/松澤ゆかり

 

漆畑 修(うるしばた・おさむ)先生

東邦大学医学部卒業後、東邦大学医学部大橋病院皮膚科部長、東邦大学医学部客員教授などを経て2007年に宇野皮膚科医院(東京都世田谷区北沢)院長に就任。医学博士、皮膚科専門医、抗加齢(アンチエイジング)医学専門医、温泉療法医、サプリメントアドバイザー。著書に『痛みを残さない帯状疱疹 再発させない単純ヘルペス』(メディカルトリビューン)、『帯状疱疹と単純ヘルペスの診療』(メディカルレビュー社)などがある。

この記事に関連する「健康」のキーワード

PAGE TOP