耳鳴りが生じやすい病気
主に、蝸牛に障害を起こす病気を紹介します。
加齢性難聴
老化に伴う蝸牛の聴覚細胞(有毛細胞)の減少によって進行する聴力障害。耳鳴りも生じやすくなる。
突発性難聴
ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる病気。耳の閉塞感や耳鳴り、めまいなどを伴うこともある。
騒音性難聴
長時間大きな音にさらされることで、蝸牛の有毛細胞が損傷して難聴や耳鳴りが起こる。
メニエール病
めまいと同時に耳鳴りや難聴、耳の閉塞感が起こり、それを繰り返す病気。嘔吐、頭痛などを伴うことも。
2つの対処法
聞こえづらくて困っている人には
補聴器療法
補聴器を使った脳のトレーニング。聞こえの悪くなっている音域の聞こえを補聴器で補い、減っていた電気信号を増やし、本来の聞こえの状態に脳が近づいていくことで、脳の過剰反応が抑えられていく。
〈ポイント〉
・目標の7割程度の音量から始めて、徐々に音量を上げていく。
・寝るときと入浴時以外は常時装用する。
・初期の集中トレーニング期間の目安は3カ月間。
・最初の1~2週間はつらいが、焦らずに。
・週1回程度受診して、補聴器を適切に調整する。
・将来、難聴が進んでも対応できるよう、出力に余裕のある補聴器を選ぶ。
補聴器の主なタイプ
耳かけ式
耳の後ろにかけるタイプ。機能の調整がしやすく、軽度から重度の難聴まで対応できる。種類も豊富でカラーバリエーションが多い。
耳穴式
耳の穴にピッタリ収まり目立ちにくいタイプ。耳かけ式に比べて音を増幅させる性能が低く、重度の難聴には不適合。個人の耳の大きさに合わせて作るため高額。
聞こえづらくはないが、耳鳴りが気になって
集中できない、眠れないなどで困っている人には
音響療法(耳鳴り順応療法:TRT)
耳鳴りが気にならないように、何らかの音を流して、耳鳴りから意識をそらす治療方法。耳鳴りが際立ち、「注意の脳(耳鳴りに脳が注目してしまうこと)」が強く働かないよう、静かな環境をつくらないようにする。
〈ポイント〉
・「聞こう」という意識が働かないよう、川のせせらぎ、滝の音、波の音などの自然音を流すと良い。音源はテレビやラジオ、CDやYouTube(インターネットの動画サイト)などから選ぶ。
・音量は大きすぎないように。耳鳴りの音量を10としたら、自然音の音量は8~9くらいが目安。耳鳴りの音が自然音などに相殺されて、1~2程度の音量に聞こえる。
・就寝時に小さく流し続けることもおすすめ。
・短期間では脳の働きは変わらないので、約半年~1年間継続する。
取材・文・構成/古谷玲子 イラスト/片岡圭子