65歳から増加する「加齢性難聴」セルフチェック。放置すると高まる「リスク」についても解説

か行、さ行、は行が聞き分けにくかったり、会話が聞き取りにくかったり、かみ合わなかったり...。もしかしたらその症状は、65歳から増加する加齢性難聴かもしれません。今回は、川越耳科学クリニック院長の坂田英明(さかた・ひであき)先生に、「加齢性難聴の特徴」について教えてもらいました。

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65歳から増加する「加齢性難聴」の特徴

□ 会話がうまくかみ合わない
□ テレビの音が大きいと言われる
□ か行、さ行、は行が聞き分けにくい

「加藤(かとう)さん」と「佐藤(さとう)さん」
「7時(しちじ)」と「1時(いちじ)」
「広い(ひろい)」と「白い(しろい)」

□ 音が鳴っている方向が分からない

スマートフォンがどこで鳴っているか分からない
サイレンの鳴った救急車がどこから来るのか分からない

□ 人通りや交通量の多い場所だと会話が聞き取りにくい
□ 1対1でなく、大人数での会話になると聞き取りにくい など

原因は有毛細胞が欠損・減少すること

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→思い当たったらすぐ耳鼻科で検査を

難聴の種類は3つあります。1つ目が中耳炎など外耳から中耳の障害による「伝音難聴」、2つ目が内耳で聴覚をつかさどる「蝸牛」の損傷による「感音難聴」(加齢性難聴はこの一種)、3つ目が両方合わさった「混合性難聴」です。伝音難聴は回復可能ですが、感音難聴の完治は困難です。上のような症状があったら、加齢性難聴以外の可能性もあるので早めに検査を。治療ではまず補聴器を装用し、効果が見られない場合は人工内耳の手術を検討します。

《耳鳴りがするときは...?》

「ゴー」「キーン」などの音が聞こえる気がする耳鳴り。実は耳鳴りは全ての人にありますが、音が大きいと苦痛を感じるようになります。原因は外耳・中耳・内耳の障害、メニエール病などさまざまです。「耳鳴りが大きくなると不眠やうつを引き起こすことも。また、耳鳴りを訴える人は、自覚がなくても8割以上に難聴が見られます」と坂田先生。これも早めに検査を受けることが大切です。

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65歳から増える加齢性難聴

認知症のリスクにも

年とともに聞こえが悪くなる症状を「加齢性難聴」といいます。

「加齢性難聴は65歳から増加し、65歳は25~40%、75歳以上は45~60%、85歳以上は80%の人に症状が見られます」と、坂田先生。

原因は「内耳」(耳の奥)の「蝸牛」にあり、鼓膜から伝わる音の振動を電気信号に変えて脳に送る「有毛細胞」が加齢により減少・欠損すること。

この細胞は再生しないので、完治は困難です。

加齢性難聴は、認知症のリスクを高めるため、放置は禁物です。

「アルツハイマー型認知症の要因の約9%が難聴です。音が聞き取りにくくなると、脳への刺激が減ります。会話も避けるようになってコミュニケーション能力が低下し、社会的に孤立し、認知症の要因となるのです」(坂田先生)

加齢性難聴は完治はしませんが、生活習慣の改善により悪化・進行を防ぐことは可能。

1年に1回は耳鼻科で検査を受け、軽・中度の難聴と診断されたら、補聴器の装用も考えるべきだそうです。

《主な補聴器の種類》

補聴器は難聴のタイプ、レベル、生活スタイルなどにより選び方が変わりますが、「補聴器は医療機器なので、『補聴器相談医』がおり、数社のメーカーから選べる医療機関で相談することが大切」と坂田先生。最低でも1カ月は試用しましょう。

【箱型】

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箱型の本体を胸ポケットなどに入れて使用。安価で操作しやすいが、大きく、コードが邪魔になることもある。

【耳かけ型】

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最も一般的。耳の後ろに本体をかけて使う。軽く小さく、細やかな調整も可能。眼鏡をかける人は装着しにくい。

【耳穴型(挿耳型)】

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イヤホンと本体の一体型。耳穴に入れて使う。目立ちにくいが、紛失しやすい、小さいので操作が困難などの欠点も

取材・文/岡田知子(BLOOM) イラスト/サノマキコ

 

<教えてくれた人>

川越耳科学クリニック院長
坂田英明(さかた・ひであき)先生

埼玉医科大学卒業。帝京大学医学部附属病院耳鼻咽喉科助手、ドイツ・マグデブルク大学耳鼻咽喉科などを経て2015年より現職。著書に『あぶない! 聞こえの悪さがボケの始まり「 耳」を知る、治す、鍛える』など。

この記事は『毎日が発見』2022年6月号に掲載の情報です。
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