「耳鳴り」が気になったら。解決に必要な、正しい知識と補聴器治療【聴覚医学の専門家・新田先生が解説】

大人世代になると持病が悪化したり、いままではなかった症状がでたりと、体の不調が気になります。今回はなかでも「耳鳴り」について、原因と解決方法をご紹介します。専門医の新田清一(しんでん・せいいち)先生に「耳鳴り」のお話をお聞きしました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年11月号に掲載の情報です。

「耳鳴り」が気になったら。解決に必要な、正しい知識と補聴器治療【聴覚医学の専門家・新田先生が解説】 2311_P074-075_01.jpg主な症状
・聞こえづらくなった状態を補おうとする脳の過剰反応

主な対処法
・補聴器療法
・音響療法

脳と耳の関係

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耳鳴りの音はさまざま

一般的に聞こえづらい音域の音が、耳鳴りとして聞こえるといわれている。脳が聞こえにくい音域の電気信号を強めようと、過度に興奮するため。

高音域が聞こえづらいと
「キーン」

低音域が聞こえづらいと
「ゴー ボー」

全音域が聞こえづらいと
「ザー ジー」


耳鳴りの発生は、聞こえのしくみと密接に関係しています。

耳から入った音は蝸牛で電気信号に変換され、その電気信号が脳に伝わることではじめて「音」として認識することができます。

耳鳴りで悩む人の多くは聴力低下(難聴)を伴っています。

加齢性難聴では、蝸牛の高音域を担当する部分に障害が起きていて、その音域の電気信号が脳に届きにくくなります。

脳は減少した電気信号を、元に戻そうとして興奮状態になり、耳鳴りが発生するのです。

耳鳴りの他、急激に片方の耳が聞こえづらくなったときは、突発性難聴やメニエール病などの病気を伴う場合があるので、早期受診・治療が大切です。

耳鳴りは長らく「治らない症状」とされていましたが、近年、耳鳴り発生のしくみが解明され、適切な治療をすれば改善が可能になりました。

耳鳴りの治療方針は「心理的な苦痛度」と「生活の支障度」の他、「耳鏡検査(※1)」や「純音聴力検査(※2)」などの結果によって決められます。

耳鳴りに不安を感じ意識しすぎると、かえって悪化するという悪循環に陥ります。

まずは耳鳴りのしくみを正しく理解することが大切です。

不安が解消され、半数以上の人は改善に繋がっています。

聞こえづらくて困っている人には、難聴を前提にした治療が有効です。

補聴器を使って音を補い、脳の興奮状態を抑える「補聴器療法」です。

耳鳴りの人のなかにはうつ病を発症している人もいます。

心療内科や精神科でのうつ病の治療と並行して耳鳴りの治療を進めることが必要です。

耳鳴りの改善には、日々の心の持ち方や過ごし方も重要です。

「耳鳴りの症状や苦痛の大きさに一喜一憂しないこと」「耳鳴りによって生活を制限しないこと」「耳鳴りは怖くないこと」を思い出してください。

※1 視診で外耳〜中耳を確認。 
※2 音域ごとの聞こえの状態を確認する聴力検査。

 

<教えてくれた人>

済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科主任診療科長 聴覚センター長
新田清一(しんでん・せいいち)先生

1994年慶應義塾大学医学部卒業後、同大医学部耳鼻咽喉科学教室助手、横浜市立市民病院耳鼻咽喉科副医長などを経て、2004年より現職。専門は聴覚医学(耳鳴り、補聴器など)、耳科学(中耳手術など)。

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