坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。
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原因となる病気を知った上で、代替療法や手術療法の選択を
坐骨神経痛の改善のために受けているマッサージや鍼灸などの代替療法の有効性や、貼り薬などの治療薬の正しい使い方、治療法の選び方などについて不安や疑問を抱いたことがある人は少なくないことでしょう。そこで、田村先生に教えていただきました。
Q1:マッサージや鍼灸治療を受けてもいいのでしょうか?
A.
坐骨神経痛の代替療法としてよく知られているのは、マッサージや鍼灸でしょう。しかし、これらによって坐骨神経痛が治るという医学的な根拠はありません。とはいえ、上手に取り入れれば、一定の効果を得ることができます。坐骨神経痛の原因は何なのか、整形外科医の診断を受けた上で、マッサージや鍼灸などを利用するのはいいでしょう。これらの行為によって、血液の循環が促されたり、リラックスすることで痛みがやわらいだりするなど、自然治癒力が高まることもあります。「気持ちいい」と感じることは良いことなので、自分の判断で代替療法を受ける分には問題ありません。
ただし、施術を受けた日は体がラクになるが、すぐに痛みやしびれがぶり返すという場合は、腰椎の病気が悪化している恐れがあります。すぐに、整形外科や脊椎専門外来を受診してください。
Q2:冷湿布と温湿布は、どう使い分けたらいいのでしょう?
A.
患部が腫れて熱を持っているときは冷湿布を貼り、炎症が起こっている部位を冷やして炎症を鎮めます。一方、疲労や血行不良が原因の慢性的な痛みには温湿布で血行を良くして、痛みをやわらげるのが基本です。ただし、明らかに炎症がある場合を除けば、貼って気持ちがいいと感じる方を使ってもかまいません。
Q3:腰の痛みに効くというサプリメントは、摂った方がいいですか?
A.
サプリメントは医薬品ではなく、栄養補助食品です。医学的な効果は認められないため、私は患者さんにはお出ししていません。最近は、「ひざ、腰の痛みに効く」といったさまざまな効果がうたわれたサプリメントがあります。サプリメントを摂っていることが、患者さんの安心感や満足感につながる場合もありますので、自分の判断で摂る分にはかまいません。ただし、いろいろな種類のサプリメントを飲み続けると副作用が心配です。過剰摂取は禁物です。
Q4:脊椎の手術を勧められました。危険ではありませんか?
A.
坐骨神経痛の場合、一般的に、3カ月ほど保存療法を行っても強い痛みが続く場合は、手術療法が検討されます。また、すでに起き上がれないほど重症な場合や、排尿・排便障害、性機能障害といった深刻な症状があり、日常生活に支障を来している場合も手術の対象となります。脊椎(背骨)の手術は決して危険なものではありません。「手術後、車いす生活になるのでは?」と心配される方もいらっしゃいますが、車いすが必要となることはまずないと考えて良いでしょう。
しかし、高い専門性と技術が必要であることも確かです。手術にあたっては、脊椎脊髄病医や脊椎脊髄外科指導医がいるかどうかが、病院を選ぶ際の判断材料の一つになります。特に、内視鏡手術の場合はとりわけ高い技術と経験が必要です。脊椎内視鏡下手術・技術認定医がいるかどうか確認しましょう。いずれにしても、最終的に手術をするかどうかは本人の意思によって決められます。担当医師とよく話し合い、納得した上で手術に臨んでください。
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取材・文/笑(寳田真由美)