「舌」が鼻呼吸に関係している!? 食べる、話すだけじゃない、意外と知らない舌がもつ「5つの役割」

【役割3】構音(発音)~話す

言葉や歌などの音をつくることを、専門的には構音(こうおん)(発音)といいます。

この構音にも、舌は大きく関わっています。

言葉を話すとき、私たちは肺から息を吐いて、のどの声帯を震わせています。そして舌や口の形を変えながら、思い通りの音につくり変えているのです。

たとえば、「ア・イ・ウ・エ・オ」は口と舌の形を変えることにより、「ラ・リ・ル・レ・ロ」は舌が上アゴに触れることにより、それぞれ発音されているのです。舌力が低下すると呂律(ろれつ)が回らなくなったり、声が枯れて老け声になったりします。

【役割4】姿勢維持~カラダのバランスをととのえる

下アゴは、頭蓋骨と一体化しているわけではなく、筋肉や靭帯(じんたい)によって頭蓋骨にぶら下がっています。重さは約1kgです。

頭蓋骨と下アゴの接点は、顎関節(がくかんせつ)(耳の前方にあります)。頭蓋骨の側面にあるくぼみに、下アゴの骨の突き出た部分( 下顎頭(かがくとう))がはまり込むようなつくりになっています。

下アゴは、口を開閉して食べものを噛むときに働いているだけではなく、重い頭(体重の約10%。体重60kgなら6kg)とのバランスを取る振り子のような役目があり、舌はその調整役をしています。ブランコ(下アゴ)に、子ども(舌)が乗っているイメージです。

舌力が低下すると、頭蓋骨と下アゴとのバランスが崩れ、姿勢の歪みや筋肉の凝り、痛みといった全身の不具合が起こります。

【役割5】鼻呼吸~口を閉じて鼻呼吸を促す

意外に思われるかもしれませんが、舌は鼻呼吸とも深く関わっています。

舌には、口呼吸をしないように、口にフタをして鼻呼吸を促す作用があります。試してみてください。舌全体を上アゴにつけると鼻呼吸しかできなくなるはずです。

呼吸は元来鼻でするもの。舌力が低下すると口呼吸が習慣化し、ハアハアと浅い呼吸となり、細胞への酸素の供給量が減少します。脳が酸欠になると集中力が低下し、筋肉が酸欠になると疲労や運動時の息切れなどが起こりやすくなります。舌を上アゴにベッタリつけて、鼻から静かに深く吸い、ゆっくり吐き出すことが大切です。

 

桂文裕
医療法人秀康会ましきクリニック院長。医学博士/日本耳鼻咽喉科学会専門医/上益城郡医師会理事。1964年、熊本生まれ。熊本大学医学部を卒業し耳鼻咽喉アレルギー科を専攻。大学病院時代は頭頸部がん治療に従事し、がん手術や最先端の免疫治療を行い治療成績の向上に貢献。舌との関わは深く「舌がんに対するリンパ球免疫療法」のテーマで医学博士を取得。2003年、熊本県益城町に「ましきクリニック」を開設。2016年に起きた熊本地震によって甚大な被害を受けたが、復興活動や避難住民の健康管理に携わり、「病気にならない町づくり」が自分の使命と確信。イベントや健康セミナーを定期的に開催し、町を元気にする活動を続ける。耳鼻咽喉科専門医として舌を診た患者数はのべ数十万人に及び「舌博士」としてマスコミにも出演多数。著書に、『12人の医院経営ケースファイル』(共著、中外医学社)、『健康医学』(共著、フローラル出版)がある。

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※本記事は桂文裕著の書籍『舌こそ最強の臓器』(かんき出版)から一部抜粋・編集しました。

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