すぐにつまずく、足元がおぼつかない...最近「歩く」ことで苦い経験が増えてきていませんか? その原因が加齢によって低下する「バランス能力」にあるというのは医師・安保雅博さんと理学療法士・中山恭秀さん。今回は、そんな二人の共著『家でも外でも「転ばない体」を2カ月でつくる!』(すばる舎)から、歩行時に転倒してしまう原因とバランス能力をアップできる簡単トレーニングの一部をお届けします。
【前回】「歩きながら傘を開く」が転ぶリスクに? 今すぐできる「転倒予防」/転ばない体を2カ月でつくる
【最初から読む】低いソファから立つのが苦手・・・なら今すぐ「バランス能力」をチェック
スリッパをはかない、手すりをつける...
もうひとつ、転倒を予防するのにとても重要なのが、「環境」です。
環境とは、みなさんの周りのものです。
物理的な要素はいろいろありますが、ベッドの高さや廊下の手すり、ふろ場の上がり框やバスチェアの有無など、まず物理的なものがあります。
家の中で、スリッパのためにつまずいて転ぶ人も多く、これはかかとまで包む室内靴に換えるだけで、転倒の可能性がだいぶ減ります。
スリッパが脱げないように歩くと、通常の歩行に必要な、かかとからの接地が難しくなります。
スリッパの底を床に滑らせるように使う方が多くなります。
床が濡れていたり、ものが置いてあったり、マットがずれていたりすると、バランスを崩しやすくなり、転倒の可能性を上げます。
室内靴は脱ぎ履きの手間がありますが、室内の転倒予防には非常に重要です。
病院に入院中の患者さんも、転倒防止に必ず、かかとの入る靴を履いていただくようにしています。
床が滑りやすいフローリングなどでは、室内靴の底にも注意してください。
お風呂で問題になるのは、洗体動作で座ることですね。
高さを調整できて足を固定できるバスチェアはおすすめです。
普通の椅子の高さで洗体ができるのは、とても立ち座りがラクになります。
同時に、浴槽に入る動線を確認して手すりを設置すると、浴槽にも入りやすくなります。
また、人的な要素も大きく影響します。
介護者(ヘルパーさん等も含めて)がいれば高いところのリスクが下がります。
この場合のリスクとは、「バランスを崩しやすい」動作ということですね。
高いところのものをとってもらったり、電球を換えてもらったりする動作は、バランスを崩しやすい動作です。
転倒リスクを高める動作は、人にお願いするのも一法です。
また、同居者がいて食事をつくってあげる等の「役割」があると、リスクや負担は増えますが、活動量は増えるので、機能低下や能力低下が起こりにくくなります。
「夜中のトイレ」が要注意
先に述べた平衡機能に影響するものとしては、室内の明るさや気温等もあります。
トイレで起きることの多い方で、寝起きの足元に少し不安のある方は、電気を容易につけられるようにするのがおすすめです。
「暗闇で見えない」ことが平衡機能を低下させ、転倒しやすくなります。
夜中の転倒はけっこう多いのです。
ベッドの周りの床に、ものを置かないようにするのも重要です。
足元にものがある環境は、つまずく可能性を高くします。
夜中に目が覚めたとき、起き抜けにふらついても支えられるように、起きたところに手すりや壁があるだけでも転倒を回避できますね。
床に滑らない素材を使うなどの配慮は、とてもおすすめです。
転倒を100%避けることはできません。
けれども、少しのトレーニングと生活上の工夫で、「避けられる転倒」は確実に少なくできるようになります。
そうしたら、毎日安心して家で過ごし、外に出かけることができますね。
【次回】あえて不安定に。簡単バランス能力強化トレーニング 「片足立ち」/転ばない体を2カ月でつくる
簡単なトレーニングや環境づくりで転倒は防げる! 医師と理学療法士が6章にわたって「転ばないための体作り」を教えてくれます