加齢で低下する「バランス能力」の3つの要素/転ばない体を2カ月でつくる

すぐにつまずく、足元がおぼつかない...最近「歩く」ことで苦い経験が増えてきていませんか? その原因が加齢によって低下する「バランス能力」にあるというのは医師・安保雅博さんと理学療法士・中山恭秀さん。今回は、そんな二人の共著『家でも外でも「転ばない体」を2カ月でつくる!』(すばる舎)から、歩行時に転倒してしまう原因とバランス能力をアップできる簡単トレーニングの一部をお届けします。

【前回】低いソファから立つのが苦手・・・ならすぐに「バランス能力」をチェック/転ばない体を2カ月でつくる

pixta_67765140_S.jpg

視覚、前庭覚(三半規管)、体性感覚

バランス能力は様々な要素が合わさった総合力なのですが、土台としてあるのが「平衡機能(系)」です。

平衡機能とは文字通り、体を平衡に保つ機能のことです。

「視覚」「前庭覚」「体性感覚」の3つに分けられます。

●視覚

視覚とは、目から入ってくる情報を頭に伝える機能を言います。

船酔いなどは体質等も関係しますが、酔いやすい方とそうでない方はいるようです。

しかし、自分で車を運転していると酔わないけれど、他人の運転だと酔うという方がいますよね。

目は、常に頭位や体の中心を平衡に保とうとする働きがあります。

目から入る情報をもとに平衡を保つようにしていますが、自分で運転していない場合などは如実にその影響が出ると思います。

しかし、加齢による影響で視力は低下しますよね。

いわゆる近眼や老眼、動体視力の低下などです。

これらは、目で見たことを正確に頭(大脳)に伝えるのを妨げているのです。

加齢による目への影響には、調節力の低下や実用視力の低下、視野の狭小化などがあります。

この視覚機能の低下は、明らかに以下の2つの機能(前庭覚、体性感覚)より優先権を持っているとされているため、非常に役割は大きいと言えます。

「目で見る」ことで、平衡を保っているわけです。

目をつぶって立ってみると、とたんにぐらつくのがわかります。

173-002-045-a.jpg

目から入ってくる情報を脳に伝える

●前庭覚

耳の中にある 三半規管です。

3本の管からなり、横、縦、水平面の3つの軸に配置されていて、リンパ液で満たされています。

この3本の管が、傾いたり動いたりしたことを感知し、頭を平らに保とうとしたり、どの程度角度がついているかという情報を大脳に伝えたりします。

自分が運転しない車や船に乗ると酔うのは、視覚からの情報だけでなく、予測していないことに頭が思いのほか揺さぶられるために起こるのです。

自分で運転しているときなどは、自然と頭位をコントロールしているので、酔わないのです。

年をとると衰えるのは、この情報を大脳に伝える機能です。

173-002-045-b.jpg

傾きや動きを感知し、頭位を平らに保とうとする

●体性感覚

体性感覚とは、体の皮膚や筋肉などから大脳に送られる情報です。

平衡を保つためには、主に深部知覚という、関節が曲がったり動いたりする感覚や、骨に加わる振動などが使われています。

車のナビの位置情報のように、逐一伝えられているのです。

足が曲がったら曲がったという情報を伝えて、立つと足の裏にかかる重さを伝えます。

視覚系、前庭系を高めるのは難しいですが、体性感覚は「体を止めておこう」とすることで高められます。

これが、トレーニングをすることで平衡は保たれるという私たちの根拠です。

足の裏の感覚を靴下やスリッパなどでぼやかして伝えるより、素足で感じたほうが床面の変化を正確にとらえることができます。

足先が冷える方などは、慣れた素材の5本指靴下などがおすすめです。

173-002-045-c.jpg

体の皮膚や筋肉などから大脳に送られる情報

筋力や反応スピードなども総動員してバランスを保つ

これらの「平衡機能(系)」は、もともと体に備わっているものです。

ただ、加齢とともに低下してくるのは、先にも述べた通りです。

しかし、バランス能力を構成するものは、平衡機能(系)だけではありません。

筋力ももちろんそうですし、体の姿勢や関節の曲がり方、反応の速さ(俗に言う反射神経)、判断力、注意力なども含まれます。

体の様々な機能を総動員して、バランスを保っているわけですね。

視覚や三半規管などの平衡機能が低下しても、他の機能に余力があれば、バランスは保たれるのです。

けれども、加齢とともに、筋力や反応スピードもたいてい低下してきます。

たとえば、平らな床面でつまずいて転ぶというのは、股関節を曲げる腸腰筋(腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉)の筋力低下により、足を前に出すときに十分膝が持ち上がっていない、つま先を上げる前脛骨筋(向こう脛の筋肉)の筋力低下で十分つま先が上がっていない、といったことがあります。

人にぶつかったりしてふらついたとき、踏みこたえられず転んでしまうのは、下肢(足)の筋力低下、とっさに足を出す反応スピードの低下も原因のひとつです。

バランス能力を構成する、あらゆる機能が低下することで、簡単にバランスを崩して転倒する......ということになるのです。

【次回】片足立ちで20秒立てますか? すぐできる「バランス能力テスト」/転ばない体を2カ月でつくる

【まとめ読み】『転ばない体を2カ月でつくる』記事リスト

イラスト/中村加代子

173-c.jpg

簡単なトレーニングや環境づくりで転倒は防げる! 医師と理学療法士が6章にわたって「転ばないための体作り」を教えてくれます

 

安保雅博(あぼ・まさひろ)
リハビリテーション科医、医学博士。東京慈恵会医科大学附属病院副院長。リハビリテーション科診療部長。リハビリテーション治療のパイオニア。脳卒中後遺症が専門。重度麻痺に対する筋肉注射のボツリヌス療法は有名。著書に中山氏との共著『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい! 』『何歳からでも 丸まった背中が2カ月で伸びる! 』(すばる舎)などある。

 

中山恭秀(なかやま・やすひで)
理学療法士、博士(リハビリテーション科学)。東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科技師長。広島大学医学部客員教授。臨床経験28年、あらゆる領域の理学療法を担当。臨床業務や後進の指導に奔走する傍ら、講習会や講演、大学での非常勤講師、連載執筆、所属学会の雑誌編集や論文査読委員、学術大会におけるシンポジストや座長なども積極的に行っている。

shoei.jpg

『家でも外でも「転ばない体」を2カ月でつくる!』

(安保雅博・中山恭秀/すばる舎)

家の中で転倒して骨折、いつの間にか寝たきり生活に……。そんな人生を防ぐために知るべきは、転んでしまう原因と転ばないための対策です。リハビリの専門医と理学療法士が教える転倒のメカニズムと簡単なトレーニング、さらには転ばない生活環境の作り方を学んで、転ばない人生を手に入れてみませんか?

※この記事は『家でも外でも「転ばない体」を2カ月でつくる!』(安保雅博・中山恭秀/すばる舎)からの抜粋です。
PAGE TOP