「がん予防」というと、どんなイメージがあるでしょうか。様々な健康情報がありますが、がん専門医であり、予防医療のヘルスコーチとして活動する石黒成治さんは、がん予防の1つとして「筋トレ」を習慣づけることを勧めています。そこで今回、石黒さんの著書『筋肉ががんを防ぐ。専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』(KADOKAWA)より、著者が考える筋トレとがんの関連性や、具体的なトレーニング方法などを厳選して紹介します。
※本記事は石黒成治著の書籍『筋肉が がんを防ぐ。 専門医式 1日2分の「貯筋習慣」』から一部抜粋・編集しました。
【前回】「乳がん検診」=安心は大間違い!? 検診のメリットデメリットと、検診の前に気を付けること
運動が「乳がん」リスクを下げる
運動不足は、大腸がん、子宮がん、前立腺がん、肺がんなど種々のがんの危険因子として認識されています。
もちろん運動不足は乳がんの危険因子でもあります(Radiol Oncol. 2021)。
特に閉経後の乳がんでは運動をすることにより乳がんのリスクが下がることが示されています。
研究では、身体活動レベルを計測して比較するために、メッツ(MET)という単位を使います。
安静時を1としたときと比較して何倍のエネルギーを消費するかというもので、例えばメッツ値が3の活動は、中程度の歩行(例えば、時速4㎞)を1時間行うことを意味します。
50歳から79歳のアメリカの女性7万4000人のデータからの解析では、1週間あたり40メッツ運動する人は全く運動しない人に比べて22%乳がんのリスクが低下します(JAMA. 2003)。
これは週あたりの運動量が増加するにつれてリスクは低下していました。
メッツ値40は、週5日1時間のジョギングの運動に相当するのでかなりの運動量です。
実際には週3回30分程度の運動(10メッツ)でも、18%低下します。
特にやせ形の人(BMI<24.13)ではその傾向が顕著で、1週間あたり40メッツ運動する人は37%、10メッツでも30%の乳がんリスクの低下を認めています。
逆に太っている人では運動を増やすだけでは、それほど乳がんリスクの低下はありませんでした。
太っている人は運動と減量の両方が必要です。
この研究では若い頃(35歳)から運動をしっかりしている人は閉経後の乳がんのリスクが低下することも示されています。
運動はなるべく早くから始めた方がいいし、継続することが鍵となります。