日々のストレスから、体も心もなんだか重い...そんな人は、ぜひ「自律神経」を整えてみて!自律神経研究の第一人者の小林弘幸さんとミュージッククリエイター・大矢たけはるさんがタッグを組み、 『医者が考案した聞くだけで自律神経が整う15曲』(アスコム)を出版。その中から「音楽を聴くことで自律神経が整う仕組み」「自律神経タイプチェック」など心身の不調を解消するヒントをご紹介します。
過去や未来をイメージすることが大切です
自律神経を整えるには、音楽以外にも効果がある手段があります。
私は「日記」をつけることもたいへん有効だと考えています。
「日記」と言っても、私がおすすめしているのは、「今日いちばん失敗したこと」「今日いちばん感動したこと」「明日の目標」をそれぞれ1行にまとめるという簡単なもの。
全部書いても3行で済むため、私はこれを「3行日記」と呼んでいます。
みなさん、どうして「3行日記」で自律神経が整えられるのか、わかりますか?
それは、その日の自分の過去を振り返り、明日の自分の未来に思いを馳せるからです。
人間の心身の活動は、自分の過去や未来のイメージをふくらませようとすると、そのとたん、すっと落ち着いて平静を取り戻すようにできています。
このように心身が落ち着くのは、呼吸が整うためです。
呼吸が整ってゆっくりと深く息をするようになると、多くの酸素が取り入れられ、血行がよくなって、酸素と栄養を載せた血液が体のすみずみに行き渡るようになります。
また、それと同時に副交感神経が高まって、自律神経のバランスが安定する方向へとシフトします。
だから「3行日記」をつけていると、1日1日、自律神経の乱れをリセットしつつ、心と体の調子をよりよい方向へ整えていくことができるんですね。
効果をさらに高める方法「3行日記を書く」
自律神経が整う音楽の効果をよりいっそう引き出すためのハウツーを紹介していきたいと思います。
みなさんにとくにおすすめしたいのが「音楽を聞きながら日記を書くこと」です。
私は自律神経を整えるために、1日の終わりに3行の日記をつけることを推奨しています。
この日記は、「今日いちばん失敗したこと」「今日いちばん感動したこと」「明日の目標」という3つのテーマを、それぞれ1行の簡潔な文にまとめていくというもの。
自分の過去や未来のことに思いを馳せながら、ゆっくり、ていねいに文字を書くと、すっと呼吸が落ち着きます。
日々この3行日記をつけていれば、健康も、美容も、人間関係も、自己実現も、いろんなことをいい流れに乗せていくことができるようになるでしょう。
そして、音楽をBGMとして流しながら日記をつけるようにすれば、こうした〝効果〟をさらに引き上げていくことができるはずです。
まず習慣にしよう
「自律神経が整う音楽」のような「自己投影ミュージック」を聞くことでも同様の効果が期待できます。
つまり、音楽を聞きながら自分の過去を振り返り、自分の未来に思いを馳せてイメージをふくらませていけば、日記と同様、呼吸が整って、副交感神経が高まる作用がもたらされることになるわけです。
おそらく、「日記をつける」となると、たとえ3行でも〝ハードルが高い〟と感じてしまう人が少なくないのではないでしょうか。
〝続けられる自信がない〟と思ってしまう人が多いのかもしれませんね。
ですから、まず音楽から始めましょう。
音楽なら、ただ聞いているだけでいいのですから。
書くことに自信がない人は、聞いているだけで構いません。
ぜひ、1日1日、自分の過去や未来のイメージをふくらませる習慣をつけるようにしてみてください。
体のパフォーマンスを上げる「カギ」ってあるの?
ひとつのカギが見つかると、それまで疑問に感じていたことが、おもしろいくらい次々に解決していくことがあります。
私にとっては、自律神経こそがまさにそのカギでした。
自律神経バランスを測定できる機器を開発し、多くの人の協力を得て測定データを出してみると、健康な人、いい結果を出している人ほど、自律神経のバランスがいいことがわかってきました。
すなわち、人が健康になるか病気になるかも、人が仕事で力を発揮できるかどうかも、スポーツ選手が実力を出せるかどうかも、すべて自律神経のバランスで説明がつくことがわかってきたわけです。
集中力の極限で知った「ゾーン」感覚
たとえば、私は子どもの頃、「ゾーン」に入る経験をしたことがあります。
最初は中学2年生の野球の地方大会の決勝戦のとき。
0対0で迎えた最終回、ワンアウト3塁で私の打席が回ってきたのですが、私は打つ自信がなく、とにかくストライクゾーンに来る球を何球もファールで粘っていました。
ところがいつの間にか、何だか周りがシーンとなって、私はピッチャーと自分しか動いていないような感覚に陥りました。
球筋がしっかりと見え、自然にバットが出て、打った球はセンター前に運ばれていきました。
サヨナラヒットです。
当時は「ゾーン」なんて知りませんでしたが、子ども心に〝人間は、この感覚をつかめば、もっと力を発揮できるんじゃないか〟と感じました。
その後も、ラグビーの試合中や手術中などに、〝周りが止まった感覚〟になっていい結果を出せたことがあり、〝いったいこの現象は何だろう〟という思いをずっと引きずっていたのです。
「ゾーン」とは、集中力が極限まで高まっていながら、心身は冷静でいられる状態のこと。
交感神経と副交感神経の両方が高まった際に現われやすく、神がかり的なパフォーマンスを発揮できるのです。
このことがわかってから、私は多くのトップアスリートやパフォーマーを指導するようになっていきました。
すなわち、中学2年の野球大会のときに感じた〝こういう感覚をつかめれば、人間はもっともっと力を発揮できるんじゃないか〟という思いを、はからずも多くの人のために実現していくことになったわけです。
音楽にはこんな効果があるのです 医学生時代、ラグビーに熱中していた私は試合中に大ケガをしてしまい、しばらく入院していたことがあります。
そのとき、ふたり部屋で同室になったのが松ちゃんでした。
松ちゃんは、テニスをやっていて、海好きで、たくましそうに日焼けした青年でした。
私たちは、すぐに意気投合しました。
私は、どうしてこんなに健康そうな人が入院してきたのかと思いましたが、松ちゃんは、足が痛くて仕方がないのだと言います。
当時の私は医者の卵でしたから、その後、病状の進行や医師とのやりとりを見ていて、大方の推察がつきました。
松ちゃんは骨肉腫だったのです。
松ちゃんには、「本当に好きな女性」がいました。
一度告白したことがあったのですがダメだったのだそうです。
でもしばらく後、その女性が病室を訪ねてくるようになりました。
松ちゃんとその女性は、1日ずっと病室で話していました。
しかし、面会時間は限られていますので、夜になれば、病室は松ちゃんと私のふたりだけになります。
そして、そういう長い長い夜に、いつも私たちが聞いていた音楽が、ホイットニー・ヒューストンでした。
鈴木雅之さんの「ガラス越しに消えた夏」もよく聞きました。
音楽はとても雄弁でした。
お互いにかける言葉が見つからないようなときも、音楽はその都度、私たちに何かを伝え残してくれました。
いまでも自分を励ましてくれる音楽
その後、松ちゃんは亡くなりました。
いまでも私は当時の曲をよく聞きます。
あの音楽が流れると、あの病室と松ちゃんの顔が浮かんできます。
私は、勤務先の病院と家とを車で行き来しているのですが、仕事でヘトヘトに疲れた日や人間関係のストレスでげんなりした日に、カーステレオでホイットニー・ヒューストンを聞くと、松ちゃんが〝それくらいのことでへこたれるなよ〟と言ってくれている気がします。
すると、耳を傾けているうちに迷いが消え、いつの間にか心のトーンが塗り替えられて、明日もがんばろうという気持ちになってくるのです。
音楽には大きな力があります。
とりわけ、自分の過去の体験や思い出が深く刻まれた音楽は、その人にとって大きな力となります。
みなさんもぜひ、そういう音楽を大事にして、これからの自分の人生のために役立てていくようにしてください。
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