誰にでも最期は訪れます。本人だけではなく、家族もあらかじめ心の準備ができるよう、治療方針などを書面に残しておくことが必要です。その大切さを考えます。医学博士の高林克日己(たかばやし・かつひこ)先生に、「在宅医療のQ&A」を教えていただきました。
「事前指示書」と「在宅医療」で分かっていれば安心Q&A
Q:事前指示書を書いたけれど考えが変わったら?
A:何度でも書き換えてかまいません。
事前指示書を書いたとしても、年を取るにつれて考え方が変わることがあります。
また、病気になったことで心境の変化が起こる場合もあります。
考えが変わったときは、事前指示書の内容を書き換えましょう。
考えが変わるたびに、何回書き換えてもいいのです。
書き換えたときは家族やかかりつけ医などの医師に伝えます。
書くということ以上にみんなと話し合っておくことが大切です
Q:家族が看病できないとき利用できる場所は?
A:看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)があります。
在宅医療を受けている人がいると、同居する家族に負担がかかることがあります。
家族が仕事に行くため、日中、世話をする人がいないこともあります。
そのような場合に利用できるのが、介護保険の「看護小規模多機能型居宅介護(かんたき)」です。
「通い」や「泊まり」で利用できます。
看護師がいるので、がん末期などの看護が必要な人も安心して任せられます。
Q:1人暮らしでも最期まで在宅医療ができますか?
A:訪問診療、訪問看護、ヘルパー利用などで可能です。
1人暮らしの人も、病院から在宅医療に切り替えることができる場合があります。
「訪問診療や訪問看護、ホームヘルパーによる訪問介護などを利用しながら、在宅医療を続けている人もいます。
近くに住む家族、近所の人などの見守りがあれば安心です」と高林先生。
1人暮らしで在宅医療をするときは、本人が自分から「自宅で暮らしたい、自宅で最期を迎えたい」と希望することが大事です。
そのような本人の熱意があれば、在宅医療が可能になるといえます。
Q:訪問診療と往診では何が違うのですか?
A:訪問診療は病気でなくても定期的に訪問します。
「往診」は昔から行われてきました。
通常、病気になるとかかりつけの病院などに行って治療を受けます。
しかし、病状が重いときなどは病院に行けないことがあります。
その場合に、かかりつけ医などに連絡して自宅に来てもらって治療を受けるのが「往診」です。
必要なときにその都度、連絡して来てもらう不定期な診療だといえます。
それに対して「訪問診療」は、在宅医療の患者が受ける医療です。
診療計画に基づいて、月に2回など、定期的に在宅医に自宅を訪問してもらって治療を受けます。
【事前指示書を書くときの注意】
・書く前に家族とよく話し合います。
・1 人で書いたときは、「事前指示書」のことを、家族やかかりつけ医などの医師に知らせます。
・「事前指示書」は分かりやすい場所に保管します。
・定期的に内容の見直しを行いましょう。
取材・文/松澤ゆかり