2019年も災害が多発。集中豪雨による堤防の決壊で、一帯が浸水してしまった映像は記憶に新しいと思います。「四季の国・日本」とは無縁の異常気象に、不安を感じている方は多いでしょう。集中豪雨、台風、地震と立て続けに災害が起きている現在、気象やインフラ整備はどうなっているのでしょうか? 今回は首都高速道路技術センター上席研究員の髙木千太郎(たかぎ・せんたろう)先生にお話を伺いました。
高度成長期建設のインフラの現在「橋、高速道路はどうなっているのでしょうか?」
現在のインフラは高度成長期(1955・昭和30年~1973・昭和48年)に作られたものが多く、当時の基準で強度が設定されているため、急速に老朽化が進んでいます。
しかし、老朽化を止め安全を確保するメンテナンスが追いついていないほか、異常気象で予想した以上の災害が起こっています。
「高度成長期は作ることが主で、本格的なメンテナンスは数年前から始まったのが現状。このようなことから2012(平成24)年の山梨県笹子トンネル天井板崩落事故のようなことが、いつ発生してもおかしくないのです」と髙木先生。
定期点検報告6カ月後に鋼鉄製の斜材が破断して、崩壊しかかった事例
全体↓
重大な変状である疲労亀裂を見落とした事例
橋の点検を例にあげると、点検は実施されていますが、早期処置が必要だと判断しても、手を付けていない箇所もあります(円グラフ①②)。
①橋のⅢ、Ⅳランク対策状況
②橋のⅢ、Ⅳランク対策状況
出典:国土交通省 道路メンテナンス年報(2019年8月の数値をグラフ化)
また技術者により点検の仕方も異なり、点検の6カ月後に破断する事故などが起こっています。
「災害が起こっても日本は安全だという神話は過大評価です。事故が起こらないように予防的処置を行える社会に、変えましょう」(髙木先生)。
取材・文/中沢文子