上がり続ける平均気温・・・日本の夏「異常気象」が異常ではなくなる日が来る?

連日の猛暑に、ゲリラ豪雨...。近年の日本の夏は、まさに「異常気象」といえます。日本の夏は、今後どうなっていくのでしょうか? 気候変動のメカニズムを研究している東京大学大気海洋研究所気候システム研究系教授の渡部雅浩先生に聞きました。

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上がり続ける平均気温。このまま毎年猛暑は続く?

2018年7月、日本列島は記録的な猛暑に見舞われ、熱中症による救急搬送者数は同月だけで5万人を超え、同月の熱中症による死亡者数は1000人を超えました。

さらに昨年は、1日の最高気温が35度を超える猛暑日が延べ6000地点以上で観測され、過去最多を記録しました。そして今年も5月から全国各地で猛暑日が観測されるなど、その暑さはとどまることを知りません。ニュースで「異常気象」という単語を目にするたび、「昔は夏でも、こんなに暑くはなかったのに...」と思ってしまいます。

この暑さは、今後も続くのでしょうか。気候変動のメカニズムを研究する渡部先生は、「近年、気温が上がってきているのは事実です」と指摘します。

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日本の年平均気温の変動を見てみますと、年ごとに上下しながらも、全体としては右肩上がりに平均気温が上昇しています。その中には、これまでも昨年と同じぐらい暑い夏はありました。しかし、気象はさまざまな要因に影響されるため、暑い夏もあれば冷夏もあるというのが20~30年前の常識だったそうです。しかしいまはそこに、地球温暖化という事情が加わっています。そのため、「いまはもう、来年は冷夏かもしれませんね、とは言えない状況です」と、渡部先生。

「異常気象」は、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」と気象庁が定義しています。そこから考えると、昨年7月の猛暑は異常気象だったといえるでしょう。しかしこの先さらに地球温暖化が進むと、「異常気象」の基準も変わります。つまり、これまで「異常気象」だったものが、そうではなくなる日が来るのです。

では、地球温暖化を防ぐ手立てはあるのでしょうか。地球温暖化の大きな要因とされているのが、温室効果ガス、特に二酸化炭素です。この温室効果ガスの増加が近年の猛暑にどの程度影響しているのかを、渡部先生は最新の研究で突き止めました。

温室効果ガスの排出が増え始めたのは、工業化が進んだ1800年代からです。渡部先生の研究とは、そのころからの温室効果ガスの排出増加をなかったものと仮定するとどうなるかを、スーパーコンピュータでシミュレーションするというものでした。その結果、工業化以降の温室効果ガスの排出増加がなかったと仮定すると、昨年7月の猛暑はほぼ起きなかったということが分かりました。近年の猛暑は、温暖化のせいでより起こりやすくなっていたのです。

早ければ2030年にも、世界の平均気温が産業革命以前より1.5度上昇するという研究結果もあります。しかし、二酸化炭素排出の削減には各国が取り組んではいるものの、工業化が進んだいま、簡単ではありません。また、いますぐ温室効果ガスの排出をゼロにしたとしても、地球温暖化はすぐには止まりません。「決め手がないのが正直なところです。恐らく今後も暑い夏が増えるでしょう」。現状の結論は、残念ながらこのようになるそうです。今後も、水分をこまめに摂るなどの熱中症対策が必要になるでしょう。

ゲリラ豪雨からどうやって身を守る?

そして近年の夏のもう一つの「異常気象」といえば、局地的な豪雨、「ゲリラ豪雨」でしょう。2018年6月下旬から7月上旬にかけての「西日本豪雨」では、中国、四国、九州を中心に死亡者が200人を超え、2019年7月上旬にも九州南部を中心に記録的な豪雨が観測されるなど、毎年のように被害が出ています。

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この豪雨にも、地球温暖化は関係しています。気象学では、地表の気温が1度上がると空気中の水蒸気は約7%増えるとされています。この水蒸気の量が増えるほど、豪雨につながるのです。つまり、猛暑が近年の豪雨の大きな要因の一つなのです。

ただ、どの地域にどの程度の雨が降るのか、それをシミュレーションして詳細なメカニズムを解き明かすのは、まだ困難だそうです。渡部先生によると、「猛暑と同じように豪雨もシミュレーションしてみましたが、猛暑の気圧配置のズレは数千km範囲で起こるのに対し、豪雨はせいぜい数十kmから数百kmの範囲。まだ、そこまで細かくは分析できないのが現状です」。

しかし、猛暑が豪雨に関係している以上、この夏もどこかで「ゲリラ豪雨」に遭うかも、と意識しておくことが、身を守る上で大切になります。渡部先生は、「天気予報をチェックするのがいいですが、週間天気予報ではなく、数時間先の雨雲レーダーを見るのが効果的です」と、ポイントを挙げてくれました。

雨雲レーダーはテレビのニュースでも確認できますし、スマートフォンのアプリでもチェックできます。

アプリの中には雨雲が近づき、雨が降りそうな場合は通知してくれるものもありますので、生活スタイルに合わせて使い勝手のいいものを選び、ゲリラ豪雨に注意しましょう。

取材・文/仁井慎治

 

<教えてくれた人>

渡部雅浩(わたなべ・まさひろ)先生

東京大学大気海洋研究所 気候システム研究系教授。1971年生まれ、神奈川県出身。東京大学大学院理学系研究科地球惑星物理学専攻博士課程修了。米ハワイ大学客員研究員、東京大学大気海洋研究所准教授などを経て、現職。専門は気候モデリング、温暖化の科学など。

この記事は『毎日が発見』2019年8月号に掲載の情報です。

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