トラブルの元!?兄弟2人で不動産を共有、気を付ける点は?/法律・税金で悩んだらプロに相談

法律や税金の問題をプロに教えてもらう人気の企画、今回は「不動産の共有」についての相談です。土地や建物の共有はトラブルになることも多いので、きちんとポイントを押さえておきたい問題です。司法書士の小脇 盛先生に教えてもらいました。

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【相談】

不動産の共有はやめた方がよいと聞きましたが、どうしてですか? 実家の土地や建物を所有している母が亡くなった後は、兄弟2人で半分ずつ相続しようと話し合っているのですが...。 (男性 60歳)

 

林先生の【お答え】

共有者全員の同意がなければ不動産を売ることができず、またさらに代々相続を重ねることで共有者が増えることが考えられるので、安易な共有はおすすめできません。

不動産の共有が好ましくないといわれるのは、トラブルの元になりやすいなどのデメリットが大きいからです。それぞれのご事情もありますので、絶対やめましょうというわけではありません。

不動産の共有とは一つの不動産(土地や建物)を数人で一緒に保有していることを指します。

「西側半分をAさん、東側半分をBさん」と具体的に分けるわけではなく、観念的なものです。共有者はそれぞれの「持分」に応じて保有することになります。「持分」とは、共有者が持つ所有権の割合のことです。

「夫婦2人でお金を出し合って購入したとき」「持分の一部贈与を受けたとき」「複数人で相続したとき」などに共有の状態が発生します。

仮に相談者のお母さまが亡くなり、子が数人で相続した場合は、不動産を含む相続財産(遺産)を相続分に応じて共有している状態となります。そこで、遺産分割の協議で具体的に誰が何を取得するのかを決めることになりますが、ご兄弟2名の場合は、とりあえず平等に現金も不動産も半分ずつ(不動産は現物を実際に切って分けられるものでもないし...)と、安易に不動産を共有にしてしまうケースが見受けられます。

兄弟仲が良く、相続税の心配がない場合は専門家のアドバイスを受ける機会があまりないため、このようなケースが多い印象です。

しかし、安易に共有を選んでしまうと、今後の処分が難しくなります。共有者全員の同意がないと不動産を売ることなどができません。将来的に続く相続により共有者の数が膨大となってしまう可能性もあります。

というのも、いまは兄弟で保有しているからよいかもしれませんが、それぞれに相続が発生した場合、どんどんつながりの薄い親戚同士で共有することになってしまうからです。

ただ、現実問題としては、大きな相続財産が不動産しかないということも多いでしょう。1人がその不動産の全部を取得する場合には、他の兄弟などに代償金を支払う必要が生じます。しかし代償金として支払えるほどの金銭がない場合もあるでしょう。

結果として共有を選択することもありますが、不動産のような大きな財産については、今後保有を続けるのか、または売却したいのかなど、共有者間で同じ方向を向くことができないとトラブルになってしまいます。

もし、相談者が自身の子孫継いでいきたいのであれば、いまのうちからその準備をした方がよいかもしれませんね。ご兄弟としっかりと話し合い、安易な決定には十分に気を付けましょう。

 

※「法律・税金で悩んだらプロに相談」そのほかの回はこちら。

 

 

<教えてくれた人>
小脇 盛(こわき・しげる)先生

司法書士。東京司法書士会所属、司法書士小脇事務所所長。個人からの依頼による相続や遺言の相談をはじめ、不動産登記・商業登記や債務整理から成年後見まで幅広い案件を担当。

この記事は『毎日が発見』2019年4月号に掲載の情報です。

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