2017年3月にインターネットでアダルト動画を閲覧していた75歳の男性が、5,000万円を騙し取られる事件が勃発。さらに国民生活センターには、同様の被害に遭った高齢者からの相談が急増しています。これまで語られることの少なかった高齢者の"性"問題は、いったいどのように変化してきているのでしょうか。
タブー視される高齢者の"性"
2017年に放送された「クローズアップ現代+」(NHK)では、高齢者が抱える"性の悩み"を特集。様変わりする高齢男性の性衝動について取り上げ、「なかなかデリケートなところに切り込んだな」「触れづらい話題だからこそ、この特集には価値があると思う」と大きな注目を集めました。
番組で紹介されたのは、2カ月に1度は派遣風俗店を利用しているという70代の男性。病気が原因で妻から夫婦の営みを拒否されたことが、風俗店を利用するきっかけに。男性は高齢者の性に関して「そういう欲求があったとしても社会に受け入れられてない」「だけどやはり、高齢者も性の欲求がある」とコメントしています。
実際に日本性科学会が1,000人以上を対象に行った調査によると、性的な欲求があると答えた男性の割合は60代で76%、70代でも75%に。夫からは精神的な愛情や労わりのみが欲しいと考える高齢女性の中には、戸惑いを感じる人も多いようです。
田園調布学園大学の荒木乳根子先生によると、女性は閉経を迎えた50~60代で性交痛が起こることも。性交痛への対処法はあるものの、そこまでして夫婦の営みをしたいと考える女性は少ないと明かしていました。
高齢女性は性的欲求が少ない?
公益社団法人「江東区医師会」の公式サイトによると、妻が健在な男性でも47%が性生活に関して不満を持っているそう。その原因としては「妻が応じてくれない」という回答が26%を占め、高齢男性全体では70%が性的不満を抱えていると回答。一方女性の57%は性的欲求は全くないと答えており、男女の差は深刻な問題となっています。
実際にネット上では、「夫のことは好きだけど性交渉はしたくない。どうしたらいいかわからない」「そういう気持ちがないわけじゃないけど、痛みを感じるのはつらい」といった悩みの声が続出。一方で「閉経しましたが、市販されている専用のジェルを使ってます。性交渉は大事なスキンシップですよ」「60代ですが全然現役です! ご夫婦によるかと思いますが、生活を豊かにする1つの方法だと思います」と、いくつになっても性生活を満喫している夫婦もいるようです。
"性"の形は夫婦や個人によって大きく違うはず。まずは高齢者だからと厳しい目を向けるのではなく、それぞれの形を受け入れることが大切かもしれませんね。
文/藤江由美