60歳をすぎても、「今日行くところ」と「給料日」がある......これって思った以上に幸せなこと。趣味に、おけいこに、交友関係にと、老いの時間を豊かに生きるためには毎月ちょこっとでも現金が必要。「年金だけでは暮らせない」と不安に怯えるよりも、仕事を探して働きませんか。いきいきと働くシニアに取材して、仕事を得るノウハウや、自分らしく働き続けるコツを、実例を交えてご紹介します。
※この記事は『65歳で月収4万円。 年金をもらいながら ちょこっと稼ぐコツ』(阿部絢子/KADOKAWA)からの抜粋です。
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職種はさまざま、目移りする
訪ねたのは東京・飯田橋にある「東京しごとセンター」(公益財団法人東京しごと財団)。55歳以上のコーナー室の求人ファイルには、どんな職種があるのでしょうか。実際に手に取って、ファイルをめくってみました。
ファイルは、すべて地域別に、パート求人とフルタイム求人の二つのブロックに分かれ、60歳以上はさらに別になっています。
パート職種は、大きく「清掃」「調理」「販売・接客」「管理員」「営業事務」「オペレーター」「経理」「訪問介護」「技術」「薬剤師」などといった内容別になっていて、そこに求人票が綴られています。
55歳以上向けの求人票に書かれてあったのは、実に多くの職種でした。
その一枚一枚をめくりながら、求人条件、試用期間のありなし、書類選考のありなしなど吟味して、自分に合った職種を見つけていくのですから、実際に見ているうちに、メモを取っておかないと、一冊見るのでも、枚数が余りにも多過ぎて、目移りして、忘れてしまいそうです。
例えば、「清掃」というくくりであっても、マンション清掃、オフィスビル、鉄道のコンコース、大学内(これはわざわざ女子トイレありと断り)など。中には映画館の清掃などもあって、清掃職種にも幅があることがわかります。
「調理」では、たこ焼き、蕎麦店など店舗での調理補助、会社や銀行の社員食堂の調理補助などの求人が多かったのですが、保育園の調理で食材発注から管理、食育指導までというのもありました。また、面白いなと思った調理求人は、カフェテリアベーカリーのパン作り調理補助と販売という内容です。パン作りに興味があって、起業したい人にとっては、チャンスかもしれない募集だと思いました。
蕎麦店の調理補助には、注文、商品運び、接客とあり、調理は蕎麦打ち、天ぷら、つゆ、釜揚げ、中台とありましたから、これは蕎麦職人を募集しているように受け取りました。
こうして求人票を見ているだけで、職種がいろいろ分かれていることに、改めて驚きます。もしかしたら、昔より、仕事の種類が増えているのではないかとさえ感じられます。
「販売・接客」のところでは、コンビニ店、スーパー、デパートなどに求人が集中していました。その販売内容ですが、食品の、牛肉弁当やコンビニ弁当などの販売と接客、また、レジ、品出しなどが含まれていることもありました。
特に変わっていたのが、子ども用品雑貨・服、おもちゃの販売・接客。この求人用紙の中では異色でした。また、カフェホールからの求人では、内容が接客だけでなく、レジ、盛り付け(デザート)、清掃、売上報告と広範囲にわたる仕事内容であることから、少人数ですべてこなさなければならない職場である様子が、容易に想像できます。このカフェでは2カ月間試用期間があり、よほどしっかりとした人を選びたいのだ、ということも見て取れます。
東京しごとセンターの方からは、「パートで働きたい人は、事務職志望の人が多い」と聞いたので、試しに経理の求人票を調べてみました。すると、ほとんどに試用期間があり、簿記3級の資格、パソコン入力ができるなど、条件が厳しいことがわかりました。また、働く先も、大学、青色申告会、会計事務所、税理士事務所などとなっていましたから、働きたくても、経理知識が皆無な人は無理。実際に専門知識と実務をしてきた人じゃないと難しいな、と思います。
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