早期退職後、充実の就職支援講座で保育の仕事に就いたKさん/ちょこっと稼ぐコツ

60歳をすぎても、「今日行くところ」と「給料日」がある......これって思った以上に幸せなこと。趣味に、おけいこに、交友関係にと、老いの時間を豊かに生きるためには毎月ちょこっとでも現金が必要。「年金だけでは暮らせない」と不安に怯えるよりも、仕事を探して働きませんか。いきいきと働くシニアに取材して、仕事を得るノウハウや、自分らしく働き続けるコツを、実例を交えてご紹介します。

※この記事は『65歳で月収4万円。 年金をもらいながら ちょこっと稼ぐコツ』(阿部絢子/KADOKAWA)からの抜粋です。

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早期退職後、就職支援講座に通って、職種替えしたK・Kさん( 62 歳)

大手企業を退職後、高齢者のための就職支援講座に約2週間通ったのちに、子育て支援事業を行うアソシエ・インターナショナルに応募し採用される。2014年4月に新規開設された「子育てひろば」で、オープン当初から、契約社員として勤務する。
(参考)年金受給額:ひと月あたり123000円(厚生年金)
    時給:1000円 月収:約120000円
    勤務時間:週4日 9:30~18:30

 

数年前、長引く不況の波の中にあったK・Kさんが勤める会社は、ついに、彼女に早期退職を申し入れてきました。大学卒業後ここだけに勤めてきた、もし自分がこの会社を去ったとしたら、私のアイデンティティはどうなるのか......。それが一番の不安だったといいます。

しかし、上司からの説得に応じざるを得ず、退職。次の仕事の方向性を考える日々が続きました。当時、父親の遠距離介護をしていたこともあって、介護の仕事を探そうかと、一瞬考えました。しかし、50代後半の自分より、体力があって歳が離れている若い人のほうが、人生の先輩である老人の介護をするには人間関係が上手く行くようだと、父親の病院での療養生活を見て感じていたので、つくづくと介護は難しいと、その仕事への道はキッパリとあきらめました。そして、「これまで就いたことのない仕事をしよう」と、保育の仕事を考え始めました。

保育士の通信教育を受けようと、テキストを取り寄せてみると、何と9科目もありました。歴史、栄養、法律などの教科、ピアノの実技......。全科目を受かったとしても、それから実習を経験しなければならないのが保育士。家で勉強しましたが、眠くなる。絶対に無理、通信教育などではとても受からない。これは2~4年、みっちりと専門機関で勉強しないと叶わないと悟ったそうです。

そのとき、インターネットで検索した「保育パートナーズ」のサイトで、ある保育園を見つけ、面接に行ってみたといいます。その保育施設は場所が狭く、働く時間帯が希望と合わない。劣悪な環境で働くことにならないよう、もっと調べなければと思いました。再度考えた上、会社都合での退社であったことから、約1年間支給される失業保険をもらうために、ハローワークへと行くことにし、それがきっかけで東京都が運営する「東京しごとセンター」を知ることに。東京しごとセンターの求人支援内容がとても面白かったし、ためになったと、Kさんは振り返ります。

東京しごとセンターでは、55歳以上の高齢者のために、さまざまな就労相談を行っています。その一環として、働く意欲のある人に向けて、無料で受けられる短期就労支援講座を設け(テキスト代等の費用はかかります)、知識や技能を教え、就職先を斡旋しています。その仕事内容は、施設警備スタッフ、マンション管理人、ケアスタッフ(介護初任者)、実践的ヘルパー(介護初任者)、ビル清掃スタッフ、病院食調理アシスタント、植木職アシスタント、駐車場スタッフ、保育補助員、調理業務アシスタントなどです。

Kさんが面白そうだなと思った保育補助員講座を申し込んだところ、定員は20名なのに、何と! 希望者は50人も。
受講生を決めるために、握力テスト、片足立ちのテストがあって、面接もあり、そこを通過して、ようやく、受講できる仕組みです。

ジムに通っていた甲斐あって、難なくテストをクリアしたKさんは、その後、ビシッリ詰まった約2週間のカリキュラムを受けました。講座では、遅刻、早退が一切認められず(電車遅延の場合のみOK)、もし、一講座でも遅刻したりすると、「保育補助員講座」失効となるという、とても厳しいものだったといいます。

15人の受講生の中には、元幼稚園の先生、元学校の先生など経験者も多く、男性は2人で、あとはすべて女性。男性の一人は途中で無理だと受講をやめてしまい、残った一人が「子ども相手の仕事がしたい」と最後まで頑張って資格を取り、児童館に就職したといいます。
「講座は10時から16時まで、座学が4講座あって、カリキュラムの途中からは、遊びの講座もありました。『はないちもんめ』、『ハンカチ落とし』、『フルーツバスケット』などの遊びに、みんな童心に返っていましたね(笑)。これが、とっても面白くて。無事、保育補助員受講修了証をいただきました」

そして、いよいよ仕事先を探すことになります。
「東京しごとセンターのシステムで一番いいなと思ったのは、合同面接があったことです。要するに、私たちがそれぞれの仕事先にアポを取って面接に行かなくても、向こうから集まってくれて、一日に何社も面接が受けられるシステムなんですよ。インターネットなどの求人ですと、60歳間際の年齢では、履歴書を出した時点で、『あ、結構です』って断られるので、ネットで探すのはあきらめました。それで、東京しごとセンター主催の合同面接を受けました」

Kさんが受けた合同面接の流れを、詳しく伺いました。

まず、採用を希望する企業のリストが出され、面接を希望する側のプロフィールも企業に渡ります。そして、自分から応募したい企業をコールしますが、企業からも採用したい人のコールが来るそうです。何だか、お見合いのようですね。

企業からのコールについては、「あなたが望まなければ面接は受けなくていい、面白そうと思うなら受けてみなさい」と、アドバイスされたといいます。
「私は、8社くらいから面接の申し込みがありました。アソシエ・インターナショナル、グローバルキッズ、ライフサポート、小学館など。私がコールしたのは、アソシエ、グローバルキッズ、小学館の3つ。面接のセッティングも、東京しごとセンターがしてくれて、AKB48のオーディションもこんな感じかな、みたいな思いで受けました。このとき役立ったのが、再就職支援セミナーで受けた『履歴書の書き方』と『面接のポイント』、それに『呼吸法』。これらが、結構ためになりました」と話してくれました。

東京しごとセンターでの面接後、企業から連絡がありました。面接を受けた3つの企業のうち、2社から連絡があり、そのうちの1社、アソシエ・インターナショナルが、新施設「子育てひろば」を立ち上げるための採用募集だったので、「新しいところのほうが面白いかな」という理由で決めたといいます。

「3月からということでしたが、『時間があったら来てください』と言われて、2月末から仕事をスタートしました。週4日、9時半から18時半まで。以前の職場では、パソコンを駆使しなくてもよかったけど、会社を辞めたら、何でも自分でやらなきゃならない。おかげさまでパソコンが使いこなせるようになり、ワードでお便りも作れるようになりましたよ。写真を撮って、パソコンに取り込んで、自分でレイアウトして。すごく、楽しんで作っています。

いまは、ほとんどが事務の仕事ですが、ときどき一時預かりの保育の担当になることもあって、そういう意味では、事務ばかりよりはいいですね。それと、私はお買い物係なんです。受付用ノートなど、ひろばで使う備品を買ったり。楽しいですよ。お金を使うのは好きですからね、自分のものではありませんけど(笑)。ここの職場は、みんなで一から立ち上げて、始めたところですから、お互いに助け合っていて、仕事がやりやすいです」と、瞳がいきいきと輝いていました。

東京タワーからすぐのところに、Kさんの仕事場である「子育てひろば」と「乳幼児一時預かり」の施設があります。「子育てひろば」は登録すれば子どもと保護者が一緒に無料で遊べるひろば。「一時預かり」は、最長5時間まで、4カ月~就学前までの子どもを預かっています。

広くて、明るいスペース。私が訪ねたときには、2歳くらいの子どもたちが、のびのびと遊んでいました。以前の会社勤務のときに比べると、通勤時間がちょっと長くなったとはいえ、育ち盛りの子どもたちとの触れ合いは、Kさんにとって、活力源ともなっていると、私には感じられました。

「○○ちゃん、またね」と、子どもたちを送り出している彼女の声の響きには、「明日」という光が満ちているのではないかしら、と思います。

 

★株式会社アソシエ・インターナショナル
「子どもたちが未来に夢を持つこと。地球人として自信と誇りが持てるような一人の自立した人間になること。そうなる日が来るために、子どもたちの根っこを育てることが、私たちアソシエの使命です」という精神で、1991年に会社を設立。児童福祉施設事業、子育て支援事業、保育に関わる人材育成事業など、いくつもの事業、これらに関する企画と運営相談を展開する。社長のポリシーは「若い人や同じような年齢の人だけが保育するのではなく、いろいろな年齢の人が見たほうが、子どもはバランスよく育つ」。現在14施設で、550人の子どもたち、登録利用者5900人、250人のスタッフが共に過ごしています。

 

 

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阿部 絢子(あべ・あやこ)

1945年新潟県生まれ。生活研究家。洗剤メーカー勤務を経て、百貨店の消費者相談室に30年間勤務し、現在に至る。家事研究の第一人者として、食・掃除・洗濯・整理収納・片付けから環境問題まで。生活全般にわたる豊富な知識と実践的なアドバイスは幅広い世代から支持されている。近著に『老いの片付け力』『60代の生き方・働き方』(共に大和書房)がある。

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『65歳で月収4万円。 年金をもらいながら ちょこっと稼ぐコツ』

(阿部絢子/KADOKAWA)

年金暮らしは、なんと人生の3分の1を占めるほどの長さ。「年金だけでは暮らせない」と不安に怯えているよりも、仕事を見つけて毎日ちょこっとでも現金を手に入れませんか。ちょっとの現金が趣味やおけいこ、交友関係と、暮らしをより豊かにし、ゆとりを産んでくれるのです。なにより、いくつになっても「今日行くところ」と「給料日」がある幸せは大きいもの。いきいきと働くシニア世代に、仕事を得た方法と働き続けるコツを取材。シニアを受け入れる企業や一緒に働くヤング世代の声、働きたいシニアをあと押しする公的支援などの情報もまとめました。これから年金生活を迎えるみなさんが、自分らしく働き続けることができるためのノウハウが詰まっています。

この記事は書籍『65歳で月収4万円。 年金をもらいながら ちょこっと稼ぐコツ』からの抜粋です

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