せっかく迎える「第二の人生」、イライラ・クヨクヨしていてはもったいない! 見えない将来に不安ばかり抱き、ひたすら悩みを膨らませているシニア世代のために、より楽にすがすがしく生きていくための心の持ち方を伝授します。
※この記事は『精神科医が断言する「老後の不安」の9割は無駄』(保坂隆/KADOKAWA)からの抜粋です。
「老い」は「成長」と考えていい
「老後の暮らしを快適にする生活術」や「老後をイキイキと暮らす健康法」など、私たちのまわりには「老後」という言葉があふれています。ただし、そのとらえ方はさまざまです。
まだ60歳にもならないのに「もう歳だから」とつぶやいて、すっかり老け込んだ人もいるかと思えば、80歳を過ぎてもカクシャクとして選挙に打って出る長老もいますから、まさに人それぞれ。100人いれば100 様(よう)の「老後」があるのかもしれません。
ところで、「老い」と「成長」というと、まるで違う言葉に見えますが、そうでしょうか。人間に生きる意欲があるかぎり、人生と成長はセットになっているのではないでしょうか。たとえば、20歳の人がゴルフを始めても60歳の人が始めても、「うまくなりたい」という願いは同じはずです。ときどき行くカラオケ店で、歌うたびに「もっと上手に歌いたい」と思う気持ちにも、年齢は関係ありません。つまり、命あるかぎり人間は成長し続ける生き物なのでしょう。
聖路加国際病院理事長だった故・日野原重明先生も、「『向上心』は人生を磨く」と、上をめざすことの大切さを語っていましたし、「未知の世界に自ら飛び込んで、やったことのないことをやることによって、使ったことのない脳が働き出す」と、チャレンジによって人間の脳が進化するプロセスと、未来に向けて一歩踏み出すことの意義を言葉にしています。
さらに、「どんな困難に直面しても、『ここから始まるのだ』ととらえ直すことができれば、私たちは必ず前進できます。生きていることの意味は自分で探し、勝ち取るものです。それが、つまり生きがいにつながります。人生とは未知の自分に挑戦することです」という言葉は、私たちをどれほど勇気づけてくれることでしょう。
100歳を過ぎても衰えない探究心と好奇心で、生前、いつもワクワクしながら暮らしていたという日野原先生の原動力も、やはり尽きせぬ成長への願いだったのかもしれません。
もっとも、「成長」をめざそうとして、ことさら堅苦しく考えることもありません。何か自分が好きなこと、興味のあること、魅力を感じることを見つけて、それに熱中していれば、成長はあとから自然についてくるでしょう。
楽しみながら学び、学びながら成長する。充実した老後を過ごすには、成長が大きなファクターになります。本を読んだり、映画を観たり、インターネットで調べごとをしたりして好奇心を満たしているうちに探究心が湧いてきたら、大学の公開講座で学んだり、図書館をデスク代わりに使ったりしてみましょう。生活の幅まで広がるかもしれませんよ。
好奇心で目を輝かせながら何かに挑戦する気持ちには、あふれる活気と老いを跳ねのけるパワーがあるのです。
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