北海道・帯広の何もなかった土地に、約30年の月日をかけて『紫竹ガーデン』をつくった紫竹昭代(しちく・あきよ)さんこと紫竹おばあちゃん。
「君はかわいい服が似合うね」
いまは亡きご主人のそんな言葉を胸に秘めて、90歳になるいまも、花の帽子と服でおしゃれをしています。
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紫竹おばあちゃんが庭に出るのは朝7時45分。「おばあちゃんに一目会いたい!」そう願って全国から帯広まで足を運ぶ人たちを、花尽くしのおしゃれをして出迎えます。
なぜ、花模様の服と花飾りの帽子を? そう尋ねると、おばあちゃんは少女のように少しはにかんでほほ笑みました。代わりに言葉をくれたのは、庭作りとその苦労を陰で支えてきた長女・和葉(かずよ)さんです。
「両親は仲良しでした。だから、私、大人はけんかをしないものだと信じていたんですよ。母は、生前の父が喜ぶことを、ほんっとにね、何でも全力で。例えば、父のお友達が家の前を車で通ると聞けば、その一瞬のためだけに、おやつと果物を袋に一生懸命詰めて、ひとりひとりに手渡すんです。そういうことが当たり前でした」
そんな花の装いを、父がよく褒めていたことを覚えています。花柄の服を着れば、"かわいいね"、"お母さんはやっぱりピンクだよね"って」
最愛のそのご主人を亡くしたのが56歳のとき。深く出口の見えない悲しみから63歳で立ち上がり、いまは思いのたけを花に注ぐ日々です。
「父の言葉は母の宝物。いまも背中を押されているのでしょうね」
花の帽子
"気持ちがぱっと明るくなるわ"
紫竹ガーデンのレストランの入り口には、おばあちゃんの帽子がずらりと並んでいます。それは、お客さまがそれをかぶり、おばあちゃんと記念撮影できるようにという配慮。「最初は恥ずかしがっていた人も、いかめしい顔をした人も、かぶればみんな笑顔になるの」
花の服
"毎朝、何を着ようかしら?って考えるの"
好きな服に着替えたら、鏡の前で口紅を引き、赤いマニキュアを丁寧に塗り直す...。おばあちゃんは、くる日もくる日もそうして身支度を整えます。
花の絵
"庭と同じように、心にも色を付けましょう"
おばあちゃんは庭に咲く草花の絵を描くのも好き。時間を見つけて四季折々の様子をスケッチしては、ガーデン内のレストランに飾っています。
取材・文/飯田充代 撮影/守澤佳崇
紫竹昭代(しちく・あきよ)さん
1927年、北海道・帯広生まれ。幼い頃に遊んだ花いっぱいの野原を夢見て庭づくりを始め、1992年に紫竹ガーデンをオープン。長女夫妻、孫、スタッフらとともに円兄で花を育て、ガー