90歳代半ばを迎えて、ますます意欲的に活動をしている瀬戸内寂聴さん。数々の著書から名言をまとめた本『愛することばあなたへ』(光文社刊)が話題です。この本に込めた思いを、瀬戸内さんが語ってくれました。
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『思いやり』から愛が生まれます
お釈迦(しゃか)さまは『この世は苦だ』とおっしゃいました。苦しむために人はこの世に生れるのでしょうか。
人間の生きる苦しみは四苦八苦と呼ばれます。人間は苦しむためにだけ、この世に生まれてきたのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。この世で苦しみにあう度、人間の心はきたえられ、ねられ、強くなります。自分が苦しんだことによって他者の苦しみが想像できます。自分が辛かったことをかえりみて、他者の苦しみを少しでもやわらげてあげたいと思います。
これが『思いやり』で『思いやり』こそが愛なのです。
寂聴さんが贈る"愛のことば"
人間は誰かを愛するために生きています。
しかし、誰かを愛した瞬間から苦しみが生れます。だからといって、
苦しいから愛さないというのは間違いです。
夫婦の形は千差万別。あなたが理解できない夫婦の愛もあるのです。
よく人は「がんばれ、がんばれ」と、言いますけれど、がんばるということは、
どこかで無理をすることで、病気になったり、神経が切れたりします。
これからはあんまりがんばらないで、もっとゆったり生きましょう。
私もがんばり屋で、ずうっとがんばってきたから、
がんばり屋の気持ちがよくわかります。
人は何のために生まれてくるのでしょうか。
一人ひとりが自分のひとつしかない生命を大切にして、
自分が幸せになるように生まれてきたのです。
そして、幸せになりたければ、
幸せになろうと自分で努力をすることです。
どんな人でも、全部悪いという人はいません。
どんな嫌いな人でも、何もかも嫌いってことはないと思うんです。
よく見たらどこかにその人のいいところがあります。
その人のいいところに目をつけて、いいところを好きになりましょう。
それが人を憎まないいちばんいい方法だと思います。
幸せは外から与えられるのを待っていてはいけませんね。
自分で自分を楽しませたり、よろこばせたりしなくては。
いつまで余生が続くかわかりませんが、
とにかく自分の好きなことを自由にやって、自分を楽しませたいと思います
あなたが元気に生きて行くことこそが、亡くなった方への最高の供養です。
撮影/篠山紀信