「親が認知症になってほしくない...」介護のことも考えて、そう思う人も多いでしょう。東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生は「認知症は予防できる病気で、何もしないのはもったいない」と言います。そこで藤田先生の著書『親をボケさせないために、今できる方法』(扶桑社)より、食事と生活の中での「認知症の予防策」についてご紹介します。
糖尿病は脳を〝ガス欠〟にしてしまう
「血糖値」という言葉をよく聞くでしょう。
血液中のブドウ糖の量のことです。
この値をコントロールすることが、認知症の予防に欠かせません。
人の身体は、血糖値を一定に保つためのシステムが備わっています。
その一つが、インスリンというホルモンの分泌です。
食事をして血中のブドウ糖の量が増える(血糖値が上がる)と、すい臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは、ブドウ糖を細胞にとり込むためのホルモンです。
インスリンが働くことで、ブドウ糖がエネルギーに変換され、血糖値も下がるのです。
食事からとるブドウ糖の量が多くなれば、そのぶんインスリンがたくさん必要になります。
糖質をたくさんとりすぎてしまうと、すい臓はインスリンをつくり続けなければいけなくなるのです。
こうしたことがたびたび起こると、すい臓はやがて疲れ果てます。
すると、インスリンの分泌量が減ってしまったり、働きの悪いインスリンしかつくれなくなったり、その両方が同時に起こってきたりするのです。
こうなった状態が糖尿病です。
糖尿病になると、身体がブドウ糖をエネルギー源として十分に使えなくなり、高血糖の状態が続いてしまうのです。
この状態が脳で起こるとどうなるでしょうか。
脳細胞が〝ガス欠〟になります。
血液中に大量のブドウ糖が運ばれていても、インスリンの働きが悪くて、脳細胞がうまくとり込めないのです。
生命と思考のコントロールセンターである脳は、体内でもっともエネルギー不足に弱い臓器であるにもかかわらずです。
しかも、血液中のブドウ糖の濃度が高い状態では、その異常事態に免疫が反応して炎症を引き起こし、血管をボロボロにしていきます。
こうなると脳梗塞や脳出血が起こりやすく、脳血管性認知症のリスクも高まるのです。
「3時のおやつ」に、あまいお菓子を食べさせてはいけない
そもそもインスリンは、「ランゲルハンス島」というすい臓の一部から24時間ずっと分泌され続けています。
これを「基礎分泌」と呼びます。
その量はわずかで、すい臓を疲れさせるものではありません。
しかし、糖質の多いものを食べると、すい臓はインスリンの分泌量を10~30倍にも増やさなければならなくなります。
□ せんべいや饅頭が好きで、「3時のおやつ」によく食べる
□ 口寂しさから、あまいお菓子や飴をよく口に入れている
親がこうした習慣を持っているならば、改めてもらうことです。
空腹の状態のときに、せんべいや饅頭、クッキー、ケーキ、パン、飴など、米や小麦粉、砂糖などでつくったものを食べるのはハイリスクです。
糖質が多いからです。
「血糖値スパイク」を引き起こしてしまうのです。
正常な場合、食後の血糖値は、下のグラフで表すと上昇から下降までゆるやかな曲線を描きます。
ところが、釘(スパイク)のようにとがった線を描いて、急激に上昇し、急激に下降することがあります。
この状態を「血糖値スパイク」といいます。
血糖値スパイク
血糖値スパイクが危険なのは、血糖値の急激な変動が血管を傷つけるからです。
その傷を修復することで、血管の壁は厚く硬くなり、動脈硬化へとつながっていきます。
こうなると血液の流れが悪くなり、脳細胞が〝ガス欠〟を起こしやすくなります。
すると、脳細胞が変性して脳にゴミがたまりやすくなるのです。
ではなぜ、間食で糖質の多いものを食べると、血糖値スパイクを起こすのでしょうか。
胃が空っぽのところに、糖質の多いものから食べると、ブドウ糖に分解されて吸収されるスピードが速くなります。
こうなると、インスリンが急激に分泌され、いっきに血糖値を下げるのです。
小腹がすいた状態でとる間食こそ、注意が必要。
とくに傷つきやすい70歳以上の脳には、糖質の塊のようなお菓子は危険です。
間食をやめられないならば、糖質の少ないものをすすめましょう。
ナッツ類やゆで卵、あたりめ、茎ワカメ、おしゃぶり昆布、カカオ70パーセント以上のチョコレートなどです。
【まとめ読み】『親をボケさせないために、今できる方法』記事リスト
高齢の親の認知症を予防する「具体的な59の方法」が、4章にわたって解説されています