<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ちもて
性別:女
年齢:52
プロフィール:大雑把なのに細かい事が気になる、子育て終了間近な50代主婦。
義父が生きていた頃、義父母はお世辞にも仲の良い夫婦ではありませんでした。
義母は孫の前でも平気で義父を罵り、ちょっとしたことでもあげつらい嫌味を言うので、聞いているこちらもいたたまれない気持ちになったものです。
義父以外の家族には優しい義母なので、余計なんとも言えませんでした。
たいがいの場合、義父は笑ってやり過ごそうとしていましたが、あまりに義母がしつこく言うと声を荒げる一面もありました。
夫に「お義母さんはなぜお義父さんに冷たくあたるのかな」と聞いたことがあるくらいですが、夫もその理由はよくわかっていなかったようです。
10年ほど前に義父が亡くなりました。
義母は粛々とさまざまな儀式を執り行ない、四十九日も過ぎ、仏壇とお墓を買おうと思うとわたしたち夫婦に相談してきました。
義母は何事も当たり前に、きちんとしたい人なのです。
わたしたち夫婦は義母が選んで申し込んだ墓地に意見することもなく、仏壇選びにも付き合いました。付き合うとは言っても全て経済力のある義母の一存で決定することなので、わたしたちはただついて行っただけという感じで口を挟む余地はありませんでした。
ただ驚いたのは、思っていた以上に立派なものを選んだこと。
「仏壇というのはこんなに高級なものなんだな」と率直に思いました。
そして購入した仏壇が運び込まれるまでに、リビングの一画を大々的にリフォーム。
義父の若い頃からの写真を飾り、仏壇を設置し、華やかな仏間が仕上がりました。
墓も同様で、何度かの落選の末墓地が決まると、すぐさま知り合いの石屋に頼んで墓の注文をしました。
それも義母はいろいろとこだわり、石はどこどこのものではないと、文字はこのように、デザインはこうこうでと、これもわたしたちはただうなずくだけで、全て義母の差配で決まりました。
この一連の流れをほぼ指をくわえて眺めていただけなのですが、わたしはそこはかとなく違和感をおぼえていました。
ひとつは生前、かなり弱ってからも義父に対して優しい言葉のひとつもかけなかったのに、亡くなってからは「じいちゃんが、じいちゃんが」と崇め、孫である子どもたちにもことあるごとに「じいちゃんが見てるから、じいちゃんが聞いているから」などということです。
もちろん夫婦の間のことは、はたの人間にはわからないのでとやかく言うつもりもありませんが、その何分の一でも生きている時に優しくしてあげれば良かったのにと思わずにはいられませんでした。
そしてもうひとつ、義母が大枚をはたいて嬉々として選んだ墓と仏壇ですが、もしも義母に何かあった場合どうなるのか、ということです。夫は一人っ子です。
ただ今、義母が1人で住んでいる家は都心からかなり離れたところにある広く古い一軒家で、夫は年を取ってもそこへ戻るつもりは無いと言い切ります。
墓もその近くにあります。
今はもちろん時折義母宅を訪ね墓参りもしますが、そう遠くない将来いったいどうするつもりなんだろうと考えるとどうも釈然としない気持ちになります。
先祖代々続くというようなたいそうな家系でないとは言え、墓や仏壇をないがしろにする訳にもいかず、かと言って広くもないマンションにあの仏壇を置くということが想像できないのです。さらにそれを息子に託すというのもどうなんだろうと考えてしまいます。
こんな悶々とした気持ちを夫に漏らしても「今それを考えなくても」と取り合ってくれません。
確かにそうなのですが。
考えても仕方のないことは考えないほうがいいのかと思う、今日この頃なのでした。
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