例年、年末年始は日曜日を除いて仕事でした。それが今回、創業以来はじめてお正月休業をすることに決まりました。入社して9回目のお正月を迎えていました。
今年はこれを自分時間に充てようと思いました。
前回記事:ネガティブで受け入れがたい母。それでも感謝している理由
必ず準備するおせちを作る時間、家族一緒にコストコへ行くイベント、京都の初詣...すべてのイベントを『なし!』にしてみたら、時間に余裕が生まれ、とても満ち足りたひと時を過ごすことができました。
好きな時間にパソコンに向かい、好きな仕事にひたすら取り組んでいました。
そして、その傍らには、いつも愛犬の姿がありました。
生後3カ月だった犬を飼い始めて1年2カ月になりますが、実は私は犬が好きではありませんでした。
子供の頃、友だちの飼い犬に突然飛びつかれ、腕をガブリと噛まれました。その犬に狂犬病の予防接種をしていないことが分り、ちょっとした騒ぎになったのです。それで「犬は怖い」と認識してしまったようです。
大人になってからも、野良犬に追いかけられ電話ボックスに逃げ込んだことがあります。さらには、実家の玄関先でまだ赤ちゃんだった長男を抱いていたとき、お向かいから走ってきた小さな犬がいきなり足をガブリ。履いていたズボンが破れ流血、病院で数針縫うことになったことも...。
それらが重なり、犬を見かけると遠巻きに避けて歩くようになっていました。
それなのに、娘が犬好きで。
小学1年生の時にした"犬を飼う"という約束を反故にしたまま大学3年生になり、「このまま飼わないなら、一生の嘘つきだね」と言われ、一念発起。体力も経済力もある今のうちにと、犬を迎え入れたのです。
犬種はイングリッシュ・コッカー・スパニエル。黒と白のまだらに、まゆ毛のような茶色の点が二つの、ブルーローンタン。わんぱくで人なつこい陽気な性格で、「楽」と書いて"ガク"と名付けました。
初めて抱き上げた時の、小さくて柔らかくて、温かい感覚。優しい気持ちになり、「犬が怖い」とういう気持ちは一瞬にして消え去りました。
私は仕事をしているので、普段の日中、ガクは一人でお留守番。
だからなのか、出勤時間までのわずかな時間は、ずっと私の後に付いてきます(これを密かに「ガクの後追い」と呼んでいます)。そして、夜、仕事から帰ると、「どこ行ってたん?待ってたんやー」と言わんばかりに、飛びかかって大喜びではしゃいでくれます。
私の休日には、「遊ぼう!」とボールを押し付けてきたり、足元にまとわりついたりするので、落ち着いてひとり時間を味わうことが少なくなっていました。
そして珍しく長く一緒にいられた、このお正月休み。
2日まではまとわりつくことが多かったのに、3日を過ぎるころには大人しくソファで昼寝をするようになりました。私がずっと家にいると分かり、安心してリラックスできているのかな、と思いました。
仔犬時代は小さくて、確かにかわいいのだけれど、それは見た目から単純にそう思う気持ち。一年一緒に暮らした今は、犬の表情のわずかな違いを読みとれるようになり、お互いに通じ合うものを感じるようになりました。ガクは家族に喜びや楽しさ、笑顔、会話をプレゼントしてくれる、愛おしい存在──家族となりました。
そして、このなんだかとっても懐かしい感情。
そうだ、これは幼き我が子を育てていた頃の、母性。この愛おしさは、私の中に眠っていた母性が改めて目覚めたのだと思いました。
パソコンの前に向かい好きな仕事に没頭している。ふと顔を上げると、ガクがソファで居眠りをしている姿が目に入る。お互いにそばにいるだけで満たされる。人でも犬でも愛おしい気持ちに違いはないのだ。
会社員をやめて時間を好きに使いたいと思うようになったのも、「きっとこういう生活が欲しかったんだな」と。愛おしい存在と過ごす時間を得るためにでもあるのだ、と思っているのです。
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