アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
【前回】絶縁中の母が末期癌との知らせを受けて駆けつけた。これが最後の親孝行かと思ったが...!?/かづ
【最初から読む】アッシー・メッシー・貢君だった彼が突然父に結婚の挨拶! 夫との馴れ初め/かづ
病院に到着すると、母は既に病室から出て安置所に移動していた。
母は生活保護受給者だったので病院から連絡が行ったのか、間もなく福祉の担当さんから連絡が来た。
母の葬儀をどうするかとの話だったが、私が返事に躊躇していると、福祉課の手配で生活保護の範囲で良いなら葬儀の手配をするとの事だった。
私はその話に迷うことなくお願いする事にした。
色々な考え方はあるだろうが、実際問題、この時点ですでに私はかなりの費用が負担になっていた。
母の入院先の病院は自宅から通うには有料道路を通らなければならず(そこを通らなければ倍以上の時間がかかる)、それ以外にも自分や家族の食費などもいつも以上にお金が掛かり、家計的にはかなりの負担になっていたのだ。
ここでまた一般的な葬儀を出すと言う事になれば、いくら掛かるか分からない。
今までの事から弟達がそれらをいくらか負担してくれるとも思えず、身内だけでの葬式で済ませて良いだろうと思った。
福祉の担当さんから連絡があり、役所が指定している葬儀場にお願いしたという。
その後、葬儀場に到着すると、一気に慌ただしく色んな準備を進める事になった。
『生活保護の範囲で』と言う事なので、一般の葬儀のような豪華な飾り付けなどは無く至ってシンプルな物だったが、身内だけでならこの程度でも十分だと私は思った。
ところが下弟が到着するなり、あまりにも質素な状況からか、あれは無いのかこれは無いのかと言われるので、何度も「生活保護の範囲」だからと口にする。
福祉からの範囲以内の葬儀なのだから、いわゆる『残る物』に対しての金は出ない。
位牌や遺影など、遺族の手元に残される物が必要ならば遺族が自腹で払ってくれという事らしい。
下弟が母の遺影が無いと言い出す。
一応母の祭壇には、母のスナップ写真を写真立てに入れて飾っていたのだが、下弟は「遺影くらいは...」と当然の様に言うので、「あれ作るのに1万円掛かるんやけど? 位牌には8千円掛かるんやって」と私は責めるような目で下弟を見た。
「遺影くらいは...」と言う方は簡単だろうが、その「○○くらい」にもお金は掛かる。
母に何かを残して貰える訳でもなく、ましてや父の遺産も貰っていない私にとっては、正直言ってこれでも十分過ぎるほど親孝行しているはずだと思った。
私が母の遺影を作らないと分かったからか、下弟は自分が出すから遺影を作ってくれと言って来た。
私が母の遺影を作らない理由は費用の面だけでなく、葬儀が終わった後にその遺影をどうするかというのもあった。
スナップ写真ならどこかの引き出しにでも入れておけるが、あの大きいサイズの遺影をうちに持って帰っても飾る訳にも行かず、かといって即捨てる訳にもいかない。
下弟にその事を話すと一瞬言葉に詰まった様で、恐らく遺影のその後の事まで考えていなかったのだろう。
当然の様に私が持って帰れば良いと思っていたのかもしれない。
そもそも身内だけでひっそりと行う葬儀、それも色んな事情があった母の葬儀だ。
私はむしろ大きな遺影には「えっ? そんなに大きな写真って要る?」と違和感があった。
下弟が遺影にこだわるのは、一般の葬儀と同じ様に会社に連絡していたからだった。
社員や上司や組合やらが大勢来るのに、スナップ写真では格好がつかないと思ったのだろう。
弟たちと夫は当時支店は違うものの同じ会社だ。
夫は私が言ったとおりに「身内だけ」と会社には連絡していたが、弟たちの上司や組合やらがわらわら来る事になったので、仕方なく夫もその旨連絡せねばならず、夫の上司や部下たちも来る事になった。
学校の教室程度しかない場所に、それも飾り付けもほとんどない遺影ばかりが大きく目立つ祭壇。
今夜の通夜にそれだけの人が? と憂鬱になったが、私は父や姑の時みたいに通夜振舞いだのなんのとするつもりが無かったので、どうにでもなれだった。
そこに上弟がようやく到着。
嫁と姪と嫁母も一緒で喪服を着ていた。
準備は全て終わったからと告げた。
通夜の時間が迫ると、夫や弟達の会社関係者が続々と到着するが、狭い葬儀場には当然入りきれない。
それよりも、そもそもこじんまりと少人数での所に大人数がそれぞれ車で駆けつけて来るものだから、駐車場が無い事が大変な様子だった。
今でこそあちらこちらに大小のコインパーキングがあるが、葬儀場の前の駐車場は私たちの車ですでに埋まり、近隣にも時間貸しの駐車場が無い為に、「乗り合わせで」との連絡が行き届かなかったせいか、焼香の順番が来るまで車で待機していた人もいたほどだった。
通夜はというとごく簡単なもので、葬儀業者から連絡がいったお坊さんがそれこそ福祉の範囲内の簡単なお経を上げて短時間で通夜は終わった。
駐車場の問題のほかにはトラブル無く済んでホッとした。
香典返しなどをご用意する事もしないので、お香典も辞退した。
香典辞退のもう一つの理由は、弟達にその香典の残りを分けろだのなんのと言われないようにしたかったからだ。
けれども下弟からは、さすがに実母の葬儀を結婚して嫁に出て姓が変わっている姉が出すのだからと香典を出して来たので、それはありがたく頂いた。
期待もしていなかったが、思った通りに上弟からは何も無かった。
横に居る上弟嫁に目をやったが、目をそらされた。
葬儀場には控室なども無く、祭壇の周りが畳だったのでその晩はそこで雑魚寝するしかなかった。
下弟家族には「子どもも小さいから明日の葬儀まで帰っていい」と話したら、とりあえず嫁と娘だけは送ってきて下弟は食事をしてから戻って来ると言って帰った。
同じ様に上弟に言ったが、上弟はこのまま泊まるつもりで来たと言う。
夫には子どもを連れて一旦帰って貰う事にした。
私が息子2人と夫の分の弁当を買いに近くのコンビニに行くと伝えると、呆れた事に上弟は小銭数百円しか持っていず、なんと嫁と嫁母は財布すら持っていなかった。
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