<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:60
プロフィール:子どものプライバシーを守り子ども部屋には入らない主義でしたが、時々はチェックしようと思うようになりました。
「お? けっこう大きいな」
2021年の3月、かなり大きな地震がありました。
10年前の東日本大震災のとき、内陸ゆえに津波こそありませんでしたが、家具などが倒れてひどい目にあった記憶が蘇りました。
「...ん、収まってきたな...いやあ肝を冷やしたな」
妻(57歳)と顔を見合わせました。
電灯などはまだ大きく揺れていましたが、棚の上のこけしが一つ倒れたぐらいで済みました。
そんなことがあって数日たった頃、息子(24歳)が帰省してきました。
隣県の食品系の会社で営業をしているので、少しまとまった休みが取れると帰ってきてくれます。
「いやあ、こないだの地震はどうだった?」
「え? そんなのあったっけ?」
「お前、あの揺れに気づかなかったのか?」
「忙しいもんでね...」
こんなやり取りのあと、自室に向かった息子が頭をかきながら居間に戻ってきました。
「どうした?」
「いや、部屋に入れないんだけど...」
「は?」
「ドアが開かないんだよ、なんかあった?」
そんなバカなと思い、息子の部屋のドアを開けようとすると、確かにびくともしません。
「...ホントだ...何かひっかってるんじゃないかな?」
「ドアが動かなくなるようなもの? 本棚かなあ?」
息子がつぶやきます。
「地震があったんだよね? それで本棚が倒れたとか...」
「それほどの揺れじゃなかったけどなあ...」
いぶかしく思いながら何度かドアを押し引きしてみますが、やはり動きません。
「少し隙間が開くな...中を探ってみるか」
長めのものさしを持ってきてドアの隙間から中へ突っ込んでっみましたが、特に手応えがありません。
「何もないみたいだけど...」
「本棚じゃないのかな?」
「他に何があるんだ?」
「さあ、分かんないよ」
不毛な会話をしながら、ものさしをばたつかせたり、ドアを強く押し引きしたりしていたそのときです。
...ガラガラガラ! まるで家が崩れ落ちるかのような(急だったので本当にそう思いました)轟音を立てて、ドアが大きく動きました。
「おい、壁でも崩れたんじゃないか!」
「いや、まさか...お、開いた!」
その音を合図にドアが開き、部屋の中があらわになりました。
そこには激戦の戦場の最前線(?)がありました。
「なんだ? これは...」
機関銃やピストル、手榴弾や地雷のようなものまであります。
ホコリを撒き上げながら散乱する銃器類の真ん中には、巨大なバズーカ砲が転がっていました。
「...おい、こりゃあ...」
絶句する私の前で、慌てて銃器を拾い集める息子の姿がありました。
「いやあ、まいった! 片付けますから、はい!」
息子が趣味でハマっているサバゲーのグッズのようです。
「こんなに...どこにあったんだ?」
「すぐに使わない分を押し入れに入れといたんだけど、崩れちゃったみたいですねえ」
巨大なバズーカが、先日の地震で押し入れから倒れ出て、ドアにのしかかってつっかえ棒のようになっていたのでしょう。
押入れの内部のものが一気になだれ落ちたようです。
「いや、しかしまあ...よくこれだけ...」
「先輩からお古を安く譲ってもらったり、大学時代のバイト料を全部つぎ込んだりでね...唯一の趣味なもんで」
「いや、そういう意味じゃなくて、これが押し入れに入ってたのに驚いてるんだよ」
「まあ、そこは、コツがあってですね...」
そう言いながら、パズルを組むように押入れに物を戻していく息子の姿を見て、妙に感心してしまいました。
関連の体験記:屋根の瓦が落ち、破片だらけの庭...。地震の恐怖で泣く家族に見せた、父の大きな心
関連の体験記:楽しみながら片付く! 無駄な買い物を辞めたかった私の「家中の棚と収納のチェック習慣」
関連の体験記:ケチな性格で捨てられない! 足の踏み場もない家を一新させたアラフォー主婦の片付け法
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。