屋根の瓦が落ち、破片だらけの庭...。地震の恐怖で泣く家族に見せた、父の大きな心

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:みけ
性別:女
年齢:51
プロフィール:両親と同じ敷地内に住んでいる51歳自営業。

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東日本大震災の時の話です。

当時、父は70歳、私は41歳でした。

当日は馴染みの業者さんが遊びに来ており、父も入れてテレビを見ながら3人で楽しく歓談していました。

すると、ゆらっと揺れが。

「あれ、地震?」と言いながらも、今までの様に大した揺れにはならないだろうと笑い続けていました。

ところが、どんどん揺れが大きくなります。

しかも、時間も長い。

「表に出た方が良くないか?」

業者さんの言葉で、三人揃って事務所から出ました。

そうして1歩、2歩と庭に進み始めた時、更に大きな揺れで地面にべちゃっ!

膝を打ち、動けずに顔を上げると、庭を挟んで向かいに建っている長屋の屋根が「ドン」と浮かぶではありませんか。

目を疑った次の瞬間、割れた瓦の破片がゴロゴロと庭に落ちて来ます。

呆然として数秒間動けませんでした。

破片が地面に落ちてくるのを見て、やっと逃げなければと理解できて、匍匐前進で逃げました。

その後は揺れが収まるまで記憶がありません。

気が付くと、瓦の破片だらけの庭を見つめていました。

ただただ驚きと怖さで、目の前の事に向き合う気力が全部抜け出てしまった感じです。

自宅にいる母はどうしたろう? 仕事や学校に行っている家族は? 頭に浮かぶのですが、自宅に駆けつける一歩が踏み出せません。

その時、小学生の姪が帰宅しました。

私の姿を認めると、一瞬立ち止まり、腕を伸ばして顔をくしゃくしゃにして飛び込んできました。

しゃがんで彼女を抱きとめた私も、堪えていた涙がどっとあふれ出てきてしまい、大泣きしてしまいました。

姪は泣きながら、低学年児数人の友達とどうやって帰って来たかを話そうとするのですが、泣きながらなのでうまく話せません。

私も頷くのが精いっぱいです。

すると、いつの間にか私達のところに来ていた父が歌を歌いだしたのです。

姪の好きな歌を大きな声で恥ずかしがることなく。

「お前も歌えるだろ?」と姪に声を掛けながら、歌い続けます。

なんで今、歌? どうしたの? 私も姪も口を開けてポカンです。

驚きに脅えが含まれた顔をしていたと思います。

すると父は、私達の肩をぎゅっとして、静かで揺るぎない声で「大丈夫だ」と言い、ニッコリ笑いました。

こんな時に笑えるなんて。

でも、その笑顔を見たら、不思議な事に気持ちが落ち着きました。

一番しっかりしなければならないはずの自分の体たらくに反省しながらも、父が大きく見えて感動しました。

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