<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:義母(享年82歳)が亡くなって1年半が過ぎ、妻(57歳)は思い出に浸りながら遺品の整理を始めました。
第1波のコロナ騒ぎがやかましかった2020年の3月、義母(享年82歳)が亡くなりました。
その頃、認知症がひどくなり始めていた義父(84歳)は、義母が出かけているだけだと思いこむなど、しばらく義母の死を認められない時期がありました。
そんな義父の前で義母の遺品の整理をするのもはばかられ、見合わせていました。
しかし、1年以上を経て義父も落ち着いてきました。
そこで妻(57歳)が中心となって、義母の遺品整理を始めることに。
大事にしていたバッグを見つけたり、妻が初給料でプレゼントしたスカーフが出てきたり、懐かしい思い出をたどりながら、義母の持ち物を整理していると、突然、妻が叫び声を上げました。
「なに、これ!」
休日の親孝行にと、私も妻の実家で片付けの手伝いをしていたときのことです。
「どうした?」
そう言いながら、声の聞こえた奥まった納戸に向かいます。
すると義母の古いタンスを片付けていた妻が、唖然とした表情で開け放した引き出しを見つめていました。
覗き込むと、タンスの大きな引き出しいっぱいに1円玉の詰まった袋が並んでいたのです。
「なんだい、これ?」
「知らないわよ。小銭貯金なんだろうけど...」
「いったいいくらあるんだ?」
「とにかく、両替とかしないとどうにもならないから、出しましょう」
運び出せるようにバッグに詰め込みながら取り出してみると、大きな旅行用バッグで3つ分にもなりました。
一つ一つのバッグも米袋並みの重量感です。
「何万っていう単位よね、これ」
「両替手数料がかからないはずだから、月曜になったら郵便局に持っていってみるよ」
そして月曜、郵便局に持ち込むと「いや、すごい量ですね」と言って数え始めてくれました。
少々の時間は覚悟していましたが、なかなか終わりそうにありません。
1時間ほど待っていると「すみません」というのでやっと終わったかと思ったら、「うちの機械じゃ無理です」とギブアップ宣言でした。
「古い5銭玉なんかも混じってますし、汚れもひどくて機械を通らないんですよ」
何度か試したが無理だったようです。
「銀行の専用機なら数えられると思うんですが...」
郵便局の方の言葉を受けて、今度は銀行に持ち込みました。
「手数料がかかりますが...」と確認されましたが、こうなってはやむを得ません。
しかし、ここでも始めて1時間ほどでお手上げとなりました。
「支店の機械では引っかかってしまうので、本店に回します。明日、ご連絡をしますので」
そう言われてしまい、その日は引き上げる羽目になりました。
えらいことになったと思いました。
「もし本店でもだめと言われたら、どうしたらいいんだろう?」
不安な一夜を過ごしました。
しかし、さすがは銀行の本店の機械、実に強力だったようです。
翌日の午後になって「お待たせしました。作業が終了しました」と連絡がありました。
出向いてみると、計数の結果は37,542枚とのことでした。
「手数料をいただきますので、お渡しは24,782円となります」
なんと両替手数料が12,760円もかかったわけです。
義母の蓄えは、3分の1が手数料に消えたことになります。
「なんで一円玉だけ貯め込んでたのかねえ」
義弟(48歳)もこの義母のへそくりのことは知りませんでした。
義父も(忘れただけかもしれませんが)分からないと言います。
「なんとなく、たくさん貯まってくのが楽しかったのかもね」
妻は呆れたように言いました。
引き出しいっぱいの1円玉を眺めて目を細めていたであろう、義母の姿が目に浮かびました。
関連の体験記:ブランドバッグはおばさんの印? 「バブルの遺産」を断捨離...さよなら、あの頃の私
関連の体験記:「親孝行な娘」と「何もしない息子」。遺産のほかに娘に報いる方法はあるのでしょうか...
関連の体験記:珍しく連絡のあった義母が「お金を貸して」。妻が問いただすと「衝撃の理由」が...⁉
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。