<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:公務員。息子(24歳)は私のことを「パパさん」と呼びます。義母(82)の呼び方が移りました。
「もしもし。ああ、パパさん? ママいる?」
今は家を離れて一人暮らしの息子(24歳)からの電話です。
「あのなあ、パパさんはやめろって言ってるだろ?」
「え? ああ、ごめん、ごめん、まあいいじゃん。外では言ってないよ、今は」
「当たり前だ!」
息子は私のことを「パパさん」と呼びます。
小学校ぐらいまでは、学校の先生などにも「僕のパパさんは......」などと言ってしまい、失笑を買っていました。
低学年のころ、作文のコンクールで入選した作品があったのですが、その題名は「僕のパパさんは日本一」でした。
作品評に「お父さんへの愛情を感じるタイトルが素晴らしいですね」と書かれ、面映ゆく感じました。
さすがに高学年になるとかわいらしいとも言ってられなくなり、何とか「お父さん」とか、せめて「パパ」とか言わせようと努力しましたが、やがて断念しました。
中学校で級友に「パパさん」と言ってしまいからかわれたのを境に、表向きでは使わなくなっていったのがせめてもの救いです。
実はこの呼び名の大元は義母(82歳)です。
息子が生まれて間もなく、共働きだった妻(56歳)が復職するとき、「近いんだから、家で預かってあげるよ」と言われ、車で10分ほどの妻の実家で預かってもらうことにしました。
保育所の費用もばかにならないので、ありがたく思ったものです。
そのころ、たまに私が職場帰りに息子を引き取りに行くと「ほうら、パパさんがお迎えだ」と息子に話しかけていました。
はじめは大して気にしていませんでした。
ですが、やがて言葉を喋るようになってくると息子は妻のことは「ママ」と呼ぶのに、私のことを「パパさん」と呼ぶのに気付きました。
「パパさん、は変だなあ。ほらパパって言ってごらん」
「パパ、さん?」
「だめだなあ、お前のことは、ママ、っていうのに......」
「お母さんが、パパさん、って言うからかもね」
妻の一言で気付きました。
そういえば義母は息子に話しかける時、妻は「ママ」と呼ぶのに、私はいつも「パパさん」です。
「やっぱり、ずっと一緒に世話してくれる人の言葉が移るからなあ。お義母さんに普通に、パパ、って呼んでもらうようにしてもらおう」
ところが、この何気ないお願いが通りませんでした。
「とんでもない! 大事な婿さんのことを呼び捨てなんかできるわけない」
「いや、そんなたいそうな話じゃないんですよ、息子の言葉がですね......」
「いえいえ、パパさんはパパさんですよ」
まさか、そんなにかたくなに断られるとは思わなかったので、びっくりしてしまいました。
「いや、でもですね、パパさん、で覚えられてしまっても......」
「いいじゃないですか、だってパパさんなんだから」
そう言って義母は息子をあやしながら「ねえ、パパさん、大好きだもんねえ」と繰り返しました。
結局、この妙な義理堅さはずっと続き、義母は今でも私のことを「パパさん」と呼びます。
心配通り息子はいい年になっても気を許せば「パパさん」と呼びます。
もうあきらめていますが、少なくとも私は、自分の孫が生まれた時には「お父さん、お母さん」で通すぞ、と心に誓っています。
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