<この体験記を書いた人>
ペンネーム:マスオさん
性別:男
年齢:43
プロフィール:小学校教師をしている男性です。妻(42)とは職場の上司の娘ということで見合いをして結ばれました。
「いや、それはいかんな」
舅(75歳)がこんな調子でしゃべり出すと、息子(13歳)と妻(42歳)は「ごちそうさま」と言って食卓を立ちます。
週に1、2度、妻の実家を訪問しての夕食は、その言葉で「教育指導の場」と化するからです。
15年前に私が教師を務めていた学校で、舅は校長をしていました。
やり手の校長として知られていた舅に、まだ30前の若造に過ぎなかった私は格好の指導相手だったのでしょう。
毎日のように教育理論を聞かされ、私の指導法は逐一検討の対象にされていました。
「力があると思うからこそ厳しいことも言ってるんだ、分かるね」
酒の席でもよく口説かれました。
すっかり目の敵にされていると思っていた矢先、教頭先生に呼ばれ「マスオ先生、お見合いしてみないかね」と言われました。
聞けば相手は校長の娘だと言います。
「校長からは言い出しにくいと相談されてね、まあ仲人の真似事だよ」
すっかり嫌われてると思っていたのですが、どうやら「期待している」というのはお世辞ではなかったようです。
なかなか断りづらく、会ってみるだけと思って見合いをしましたが、1つ年下の妻に不覚にも一目ぼれしてしまい、しばらく付き合った後に結婚しました。
そして...
「たまには現場の話も聞きたいしなあ」
舅が退職してからは「週に1度」は妻の実家で夕食を共にしながらの「教育談義」が行われることに...。
「ごめんね、お父さん、言い出したら聞かないから」
「まあ、しょうがないよ、いろいろアドバイスでも貰うことにするよ」
そんな気持ちで始めた習慣でした。
ところが、「教育談義」では終わりませんでした。
毎回、学校の話を聞かれ、当たり障りのないことを話しているつもりなのですが、言葉尻をとらえては「それは違うぞ」と自説を吹っかけてくるのです。
「朝食も摂らせず登校だなんて間違いなくネグレクトだぞ。保護者を呼んでだな......」
「いや校長......じゃなかった、お父さん、各家庭の事情に軽々に踏み込むのはどうかと......」
「何を言っとる。学校が毅然と保護者を指導しないとだな」
「いや本校の校長も様子を見ようと言ってるわけですし......」
「校長がそんな日和見だからいかんのだ!」
最近の子どもたちはどうだ、などと言われて、朝ごはんも食べずに登校してくる子が多くて、午前中は効率が上がりませんねえ、なんて答えた途端にこの有様です。
20年も前の手法を語られても閉口するばかりですが、話し出すと止まりません。
「いいか、マスオ先生。とにかくすぐに家庭訪問しなさい! 家庭の事情をつぶさにとらえてからの話だぞ」
「いや、そう言われても勝手に家庭訪問だなんて」
「いいから! 子どもの健やかな成長と煮え切らない校長のご機嫌取りとどっちが大事か分らんとでも言うのかね!」
私ももう30前の若造ではありませんし、中堅どころとして一端の教育論をもっています。
現代的な教育課題も多く、舅の言うことは必ずしも時流に合ってはいません。
ところが現役さながらのつもりでいる舅は、最後は「......しなさい」と職務命令のごとくです。
元上司を舅とした時から多少のことは覚悟していましたが、これほどとは......。
妻の実家での夕食会がさながら職員会議の場と変じてしまうのにはほとほと辟易しています。
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