<この体験記を書いた人>
ペンネーム:桑の実
性別:女
年齢:59
プロフィール:結婚後一男一女に恵まれました。その子どもたちも独立し、子育てもひと段落した今日この頃でしたが。
私の夫は自営業です。結婚前に夫がひとりで始めた仕事で、軌道に乗ったら結婚する約束をしていました。その後、数人の従業員が増え、仕事も安定。結婚をして一男一女に恵まれました。
息子は小さい頃から夫の仕事に興味を持っていましたが、夫は昔から「跡継ぎは考えなくていい」と話していました。「親が子どもの将来を決めるようなことはしたくない」という考えからでした。子どもたちはすくすく育ち、息子は大学に進学し、自分の意志をしっかり持った大人になっていきました。
息子は大学を卒業後、地元を離れて就職しました。でも、その数年後、夫が65歳を超えた頃から、自分が起こした会社をたたむのが嫌になってきたようなのです。
初めは、子どもたちが自立するまで頑張れたらいいなという思いで一生懸命やってきた夫ですが、段々考え方も気持ちも変化してきたようで、息子に跡を継いで欲しい気持ちが募ってきたとのことでした。
そしてついには、「帰ってきてほしい」とぼやくように。私は「息子に話してみたら」と提案しましたが、「今さら跡を継いで欲しいとは言えない」と夫は悩んでいました。いっそのこと夫が退いてすべて息子の判断に任せればいいのに、完全に息子に任せるのも気が引けるそうで、決断出来ず仕舞い。そんなモヤモヤが半年以上続きました。
そこで私は、夫に内緒で息子に話をすることにしました。
電話で話すと、息子自身も跡を継ぐことについて考えていたようなのです。息子は進路選択の際、夫の仕事の手助けができるように学部を選択していました。「跡継ぎは必要ない」と言われながらも、父親の姿を見ていろいろ考えてくれていたんだと思うと目頭が熱くなりました。息子は休みが取れたら、実家に帰って話をすると約束してくれました。
それから数カ月後、息子はまとまった休みを取って帰ってきてくれました。
息子は「お父さんとまったく同じ仕事ができるとは思っていないけれど、自分なりにやれることはやりたいと思っている」と夫に話しました。その言葉を聞いて、夫も素直に自分の気持ちを伝え、初めて「跡を継いでほしい」と息子に伝えることが出来ました。
それから数年が経ち、息子は働いていた会社を退社し地元に帰ってきました。
今では、夫と一緒に仕事をしています。私もふたりをサポートする形で携わり、家族で経営しています。今では、お互いに考えの違いをぶつけ合い、言い争いができるほど本音で話し合える関係になっています。夫も近々息子に会社を任せることにしたようです。
私自身、これから息子が会社をどんな風に変えていってくれるのかとても楽しみです。昔から変わらず維持していくことも素敵なことですが、その時代に合わせて変えていく勇気もとても大切だと思いました。全てを委ねる決意をした夫にも、跡を継ぐと決めてくれた息子にも感謝しかありません。
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