同僚から友人、そして家族になったAさんとの最後のハグ...。あなたのこと、絶対に忘れないよ

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ボーダーズ
性別:女
年齢:40代
プロフィール:40代専業主婦。愛猫溺愛中で夫はやきもち中。

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私が32歳のとき、44歳の女性Aさんとアルバイトで出会いました。

若いスタッフが多い中「お疲れ様、よろしくね。一番年齢が近そうだから!」「たまにシフトが重なりそうね、ランチ行こうね」と声をかけてくれました。

Aさんは独身で実家暮らし、本業の合間にアイドルの追っかけの資金のためアルバイトをしていました。

一方の私は独身の一人暮らし。

Aさんはよく家でとれた野菜や花を届けてくれ、だんだんただの同僚から友人へと親しくなっていきました。

Aさん自身は結婚に興味がないのですが、私の結婚観をよく聞いてきました。

私が自分の理想を話したとき「私の親戚に独身がいるんだけど?」と言い出した彼女。

私の言葉は「え~同じ苗字になるの~? 仕事しづらいね~」でした。

彼女と親戚になり近所に住む、そんな想像が簡単にできました。

その話をした半年後、私は彼女の親戚と結婚したのです。

結婚して数カ月後、私は退職し、Aさんの家の近くで夫の家族との同居が始まり、彼女は会社の愚痴、私は嫁姑問題の愚痴、友人関係は変わらず過ごしていました。

悪い知らせが届いたのは、結婚して半年が過ぎた頃。

Aさんは乳がんを罹患していました。

Aさんの「何事にも前向き、努力家」なところが好きでいつも励まされていました。

年齢的にも少し前をいく女性としての「先輩感」も、私が引き寄せられた理由の一つです。

乳がんが発覚したときでも彼女は「大丈夫」と笑っていました。

「がんが大きいから、抗がん剤で小さくしてから手術なんだって~」

明るく言うAさんは、専業主婦になった私にお願いをしました。

「長い待ち時間退屈だから一緒に病院行ってくれる? おばさん(私の姑)には私が話すから! ランチはおごるよ!」

Aさんはそう言いましたが、もしかしたら心細かったのかもしれません。

嫁姑問題で悩んでいた私に、外出できる理由を考えてくれたことにも助けられました。

抗がん剤を数クール続け、髪が抜けたときも「ウィッグ買わなくちゃ! コンサート行くの!」と治療にも前向き。

その後手術で全摘し、数日で退院。

夜間の仕事は大変だろうと、本業一本で仕事に復帰し、以前と変わらず元気にしている様子を見て、私も心底ほっとしました。

しかし半年後、体調が悪化し緊急入院。

私は毎日病院に通うことになりました。

ポジティブな彼女は「痛みが取れたらライブ行く~どのくらいで退院できるかな」といつも前向きでした。

ですが、家族から「全身転移」と聞いたのはその頃でした。

本人はあまり深刻に思っていないようなので、余命告知はしていないとのことでした。

Aさんはやがて歩くのも大変になり、ベットで寝たきりになってしまいました。

話も上手くできなくて、メールや筆談で会話をしました。

「明日時間ある? 寝てばかりいると起き上がれなくなるから体を起こしてほしんだ! よろしく」

夜の12時頃、そんなメールがきました。

翌日病室に入ると、親戚のおばさんたちが数人来てワイワイ話していました。

私もその中に入って少しすると「起こして」と合図されたので「いいよ~」と、ベットに上がり彼女をそーっと抱きかかえ背中をちょっとさすりました。

「いいかな?」

体を戻すと、もう一回と人差し指で彼女が合図。

子どもか赤ちゃんみたいだね~とおばさんたちにからかわれながら私は体を起こしました。

そのとき「ハグしてほしかったの」と消えそうな声で彼女はいいました。

それまでどんなに仲がいい友人でも、ハグはしたことはありませんでした。

私も照れながら「ハグね、ギュー。治れ~元気になれ~」とおどけて見せましたが、彼女の小さく細くなった体が悲しくて、涙が出てしまいました。

彼女は「ありがと」と小さく言ってくれました。

その数日後の深夜、彼女は病院で一人で亡くなりました。

「あの子はこうなるのが分かってて、あなたに結婚をすすめたんだろうね」

「自分がいなくなった後も(自分の)家族が減らないように、あなたに家族になってもらってから逝ったんだね」

彼女の家族や親戚は、そう話していました。

火葬の際は、ご家族のご配慮で私たち夫婦も骨を拾わせていただきました。

出会って3年弱での別れでした。

同僚から友人、そして家族になった彼女を今でも大切に思っています。

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