<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:58
プロフィール:地方公務員をしている58歳男性です。妻(56歳)の父(83歳)はとてもアクティヴです。
義父(83歳)は若い頃から開拓精神に溢れた人で、実家周囲の原野を自ら切り開き農業を進めてきました。
重機の扱いから大型トラックの運転、木の伐採に至るまで、大抵の事は自分でこなしてきたそうです。
何でも自分の思い通りにしないと気が済まず、妻(56歳)も進学や就職、私との結婚などの際にはなかなか大変だったと聞かされました。
しかし数年前から認知症の傾向が強まってきて、同じことを何度も繰り返して話したり、あちこちに財布を置きっぱなしにしてきて周囲の者が探し回るようになったり、問題行動も出てきました。
昨年の免許更新時には認知機能検査で引っかかってしまい、それを機に周囲で説得して免許返納してもらいました。
車なしでは仕事も無理だろうと、田畑も基本的には委託することに。
けれど、軽トラを乗り回してあちこちに出没するのが趣味のような人でしたので、一気に手持ち無沙汰になってしまったのです。
これまで体一つでやってきた人なので、身幸いにも(?)体は健康そのものです。
見た目は小柄ですが、いわゆる「脱ぐとすごいんです」タイプで、腕の筋肉などはいまだにボディビルダーのようにムキムキです。
体が動くのでむずむずしてしょうがないのでしょう。
しばらくすると若い頃にしていたことに発作的に取り組む傾向が出てきました。
ある日のこと。
「ちょっと、お父さん、何本作るつもりなの?」
妻の叫び声に作業小屋に行ってみると、そこには数えきれないほどの竹ぼうきの山が!
すっかりはまってしまい、毎日数本ずつ仕上げていたようで、100本ほど(!)の竹ぼうきが作業場に積まれていました。
やむを得ず私のつてで役場に寄付という形で引き取ってもらいました。
「今どき竹ぼうきですかあ...」と渋り顔の総務課の職員に拝みこんでの後始末です。
その後、竹ぼうき作りは飽きたようなのですが、次にたぎったのはかつての「開拓魂」です。
「崩れなきゃいいとは思ってるんだけどね...」
あきらめ顔の義弟(46歳)が見ているのは畑の裏側の斜面です。
生えていた雑木を次々と切り払い、結構な面積の斜面が土がむき出しの状態になっています。
「何がしか動いている方が認知症は進みにくいって医者には言われてるからなあ...」
義弟は実家で義父と暮らしているのですが、日中は仕事に出ているので義父は1人で過ごしています。
崩れると危ないから、と言っても耳には入らないようです。
そして今度は「古くなった倉庫をつぶそうと思うんだ」と言い始めました。
妻は「昔、古い母屋を崩したのを覚えてるんだねえ」と言います。
聞くと数10年前、今の母屋を立てる時に古い母屋の大黒柱を切り、重機を持ち込んで引き倒したことがあるそうです。
今の義父は重機を使えるわけではありません。
「なに、1本ずつ柱を切っていけば、いい塩梅で倒せるはずだ」
こともなげにそう言い放ちます。
「止めても聞かないでしょ。一応俺がいる時だけにする約束をしてるけど、守ってくれるものかどうか...」
義弟も困り顔です。
義弟がいない時に作業を進めようとして下敷きにでもならなけりゃいいけど、と冷や冷やしています。
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