「実はね、食べられないの」お正月恒例の食事会。私の耳元でささやいた、持病が進んだ母

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:パンジー
性別:女
年齢:52
プロフィール:お正月恒例の食事会。みんなでワイワイ楽しく過ごしているはずだったのですが......。

「実はね、食べられないの」お正月恒例の食事会。私の耳元でささやいた、持病が進んだ母 34.jpg

お正月には実家で食事会が開かれます。

これは毎年恒例になっていて、そこに集まるのはごくごく親しい親戚たち。

ですので、お互いに気をつかう関係ではありません。

そんなわけで、お膳などは準備せず、それぞれが見繕ったものを持ち寄ってワイワイ楽しく過ごしています。

その年もいつも通りに準備をして、他愛のないことを話しながら楽しい時間を過ごしていました。

そんなひと時が過ぎたころ、母のお箸が全く進んでいないことに気づいたのです。

どうしたのカナと気になり、「全然食べてないね?」そう母に話しかけてみると「ハハハ~、私のことは気にしないでね~」と笑顔でリアクションする母。

イヤイヤ、そんなこと言われても気になります。

だって時間はとっくにお昼を過ぎて、そろそろおやつタイムに差し掛かる頃。

どう考えても母の空腹はとっくにピークを過ぎているはずなのですから。

そこで、ざっとテーブルの上を見まわしながら、「コレ食べる?」「こっちはどう?」と持ち寄った食べ物をあれこれ勧めてみたら、「実はね、食べられないの」と耳元でささやくではありませんか。

実は母には持病があって、その影響で食べられないものがたくさんあるのです。

もちろんそのことは全員知っていますので、その点を考えながら食べ物を持ち寄ったつもりでした。

しかし、母の病気が進行してしまったことと、そこに高齢という条件が重なり、これまで以上に食べられるものが減ってしまっていたのです。

しかし、私はそのことに全く気づいていませんでした。

きっと、母の病気のことを気にしつつも、長い年月の間に悪い意味での「慣れ」を感じていたのかもしれません。

それが結果的に配慮の無い自分を生んでしまっていたのだと思います。

それが原因で、お正月早々母を「お腹ペコペコ」状態においてしまったなんて......と、猛省しつつもそんな感傷に浸っている暇はありません。

なにせ母はガマンしているだけで「お腹ペコペコ」状態なのですから。

そこで早速、母と二人「ちょっとお買い物に行ってくる」とそう言い残し、近所のスーパーへ向かいました。

普段はあまり行かない高級路線のスーパーへ。

きっとそこなら何かしらあるはずと期待したのです。

これが見事にビンゴ。

母は並んでいるお惣菜を見ながら「これなら食べられそう」と嬉しそうに手に取っています。

それでもなお遠慮がちだった母なのですが、「ここで好きなものをたくさん買って、お腹いっぱい一緒に食べようよ。お母さん選んでね♪」と母にお願いしたことで、きっと私の思いを理解したのでしょう。

「今日はお言葉に甘えるね」なんて言いながら、あれもこれもとたくさんお買い物をしました。

その後実家に戻り、母も私もパクパクパクパク。

「う~、もうだべれない」というほど満腹状態になりました。

ヨカッタヨカッタ。

そして同時に、この時買ったお惣菜を写真に残しておきました。

そうしておけば、きっと次回の食事会の参考になります。

あるいはもし、その時既に食べられなくなっていたならば、もう一度同じことをしすればいいカナと。

「でも今度はちゃんと用意するからね」と、母の笑顔に誓う私なのでした。

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