<この体験記を書いた人>
ペンネーム:文月奈津
性別:女
年齢:64
プロフィール:夫と次男の3人暮らし。長男が最近結婚。長男の幸せをうれしく思う気持ちの中に、ちょっぴり淋しさが混じります。
「お昼ご飯は卵サンドを作るね。買い物に行くから、お父さんの好きなメロンパンを買ってくるよ」
そう言って私は家を出ました。
帰ってくると、主人はコーヒーを飲んでいます。
さっと卵サンドを作って、紅茶を入れようとポットを持ち上げると、ポットが軽い。
「いつも言っているでしょ。コーヒーを飲もうとした時ポットが軽かったら、電子レンジを使って自分だけ飲まないで、お湯を沸かしてポットに入れてって」
何度言っても、主人はこの習慣を改めません。
そのくせ、私がいる時は温かい飲み物は私がいれるものと決めています。
自分がお茶を飲みたい時「おまえも飲む?」とたまには聞いていれてくれてもいいのではないでしょうか。
優しい主人ですが、自分がやりたくないことは絶対にしない頑固さも持っています。
「買い物は嫌い」と言って、大晦日のたくさん買い物がある時さえも、一緒に行ってくれません。
近くにドラッグストアができる前は、買い物が多い日は自転車のハンドルの右側にはトイレットペーパー、左にはボックスティッシュを持ちながら、帰ってきたものです。
よく利用するスーパーの食料品売り場は地下1階にあり、お米も買う日は買い物袋が重くて自転車まで運ぶのが大変でした。
仲良く買い物をしている夫婦を何度うらやましく見てきたことか。
一番腹が立つのは長男を出産した時のこと。
予定日を過ぎたある日、破水して病院へ行きました。
私の母は私が24歳の時に胃がんで他界しているので、頼れるのは主人だけ。
それなのに主人は入院手続きを済ませるとさっさと1人帰ってしまったのです。
1人部屋でソファーも置いてあるのだから、「心配だから、泊まろうか」と言ってくれたら心強かったのに。
私はその晩、腰が痛くて一睡もできませんでした。
腰の痛みを和らげようと自分で押した所は、2.5センチぐらいのくっきりとしたあざになっていました。
朝になったら微弱陣痛になってしまいなかなか生まれず、点滴を打ち、看護婦さんが私のお腹に馬乗りになって押し、吸引してもらってやっと生まれたのです。
この話と共にあざを見せたはずなのに、2年後次男を出産する時も主人はつきそうとは言いませんでした。
陣痛促進剤を2時間ごとに飲みながら、なんとか自然分娩でと祈りました。
午前2時15分、無事出産。
看護師さんに「ご主人に知らせますか」と聞かれたのですが、主人を思いやって「朝でいいですよ」と言ってしまいました。
「夜中にひっくり返った夢を見たんだ。あの時、生まれたのかな」
翌日の主人ののんびりしたコメントが忘れられません。
何故、二度目ぐらい泊まって付き添ってと言わなかったのだろう。
私は出産のために一睡もしてないのだから、朝早くてもかまわない、主人を起こせば良かったと、自分の人の良さに腹が立ちます。
この件はたまに話題に乗せるのですが、主人は「そうだったけ」ととぼけるだけです。
いよいよ、この秋主人は定年。
今まで通り、「やりたくないことはやらない」なんて許さないぞ。
夕飯の茶碗を洗ってくれるだけではだめ。
「俺は、料理はしない」といつも言うけれど、たまには何か作ってほしいと思っています。
朝・昼・晩のご飯に追われるのはいやだから、お昼ご飯はそれぞれでというふうにしようかしら。
ただいま、これからの夫婦関係と家事の分担についていろいろ画策中。
そりゃあ、今までお疲れ様という気持ちはあります。
でも、私だって今まで頑張ってきたのだから、家事を分担して余裕をもって暮らしていきたいと思っているのです。
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