<この体験記を書いた人>
ペンネーム:まるおじ
性別:男
年齢:52
プロフィール:専業主婦の妻と子供2人の4人家族の父です。単身赴任中で月1、2回自宅に戻る生活が3年ほど続いています。
私の父は80歳を迎えましたが、その唯一、最大の楽しみは、仲間と一緒に山に出かけることです。
と言ってもただの山登りではなく、鉄砲を担いで鳥や猪の狩猟に行くことです。
50年ほど前、ごく普通の会社員だった父は知人に誘われて狩猟を始めるようになり、猟が解禁になる冬になると、山に出かけては夜遅くまで帰らない生活を送るようになりました。
私や弟が子供の頃、愛犬(もちろん猟犬です)とともに山に連れて行かれていましたが、険しい山道を歩き続けることは小さな私たちにとってはあまりにもハード。
かつ大人に囲まれて過ごすことは非常につまらなく感じられ、小学校高学年にもなると私も弟もついて行くことはなくなりました。
しかし、その後も父は狩猟仲間と山に出かけ続け、我が家にとって、冬は母と弟と私の3人で過ごす季節、ということが当たり前になってしまいました。
そして、父は60歳で会社を定年になるとますます狩猟にのめりこみ、冬場は毎日朝から晩まで山に行ったっきりの日々を送るようになってしまいました。
私も弟も既に成人して家を出てしまっていたので、日中は母が1人になってしまいます。
母が寂しい思いをしているのではないかと少々気がかりでしたが、母も趣味の時間を好きなだけとれるようになって楽しそうな様子でした。
亭主元気で留守が良い、のかどうかはわかりませんが、夫婦ともに好きなことをして幸せな老後を過ごしている様子に、私も弟もすっかり安心しきっていました。
今や父は、近所でも「元気な鉄砲撃ちのおじいさん」として知らない人はいない存在となっており、父もそんな自分が少し誇らしいようでした。
しかし、昨年の冬のこと、母から心細そうな声で私に電話がかかってきました。
聞くと、父は先週いつものように狩猟仲間と山に出かけたのですが、仲間と寄り道をして帰りが深夜になったことがありました。
その時は珍しいこともあるものね、と母は気にもかけなかったそうです。
しかし翌日、狩猟仲間の奥様から電話があり、真相を聞いて驚いたそうです。
実は昨日は寄り道をして遅くなったのではなく、父たちは猟の帰りに道に迷ってしまい、雪も降り出す中で危うく遭難しそうになっていたそうなんです。
帰り道も分からずさまよい歩いていたところ、運よく別のグループの人たちと出会うことができたため、無事に下山できたようです。
しかし、体力の衰えが目立ち始めた父が山に行くことに、母はとても不安そうな様子でした。
心配になった私は、すぐに父に電話して、もう歳も歳だから山に行くことを控えた方がいいのではと言いました。
「俺は仲間の中ではまだ若くて元気な方だから大丈夫だ。余計な心配はしなくていい」
失敗を指摘されて腹立たしくもあったのか、聞き入れる気はないようです。
この冬も仲間と山に出かける気が満々の父に心配が募るばかりです。
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