<この体験記を書いた人>
ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:52
プロフィール:結婚生活30年。5歳年上の脳梗塞の夫と2人の子供と暮らす、働くお母さんです。
10年ほどの前の話です。
42歳の時に中古の一戸建てを購入して、現在の住所に引っ越してきました。
古いながらも楽しい我が家。
同じ一戸建でも、今まで住んでいた賃貸物件とは違い、今度は自分の持ち家です。
ここは、田舎町の比較的古くからある戸建ての団地で、200軒ほど家が建っています。
緊張気味にご近所さんに引っ越しの挨拶周りをしたところ、皆気さくで良さそうな人たちばかりで、ほっと一安心。
しかし、そんな我が家の庭に、毎日訪問してくる珍客がいたのです。
それは、紺色の首輪をつけた、大きな茶トラの雄猫でした。
最初の接近遭遇は、朝、私が洗濯物を干そうと、庭に出たときです。
ブロック塀の上をノシノシとこちらに歩いてくるその猫と目が合いました。
一瞬、猫は警戒したように動きを止めましたが、すぐに尻尾をゆっくり振りながら塀から飛び降り、驚いて止まったままの私の足元にすり寄ってきました。
猫は嫌いではありません。
子供のころは、実家で何匹か飼っていたので、親しみもあります。
でも我が家は、末の息子(当時3歳)に猫アレルギーがあり喘息気味でした。
私もアレルギー性鼻炎もちで医師から「毛のあるペットはなるべく飼わないでね」といわれており、ペットは金魚と亀。
人なつっこい茶トラ猫くんの頭を撫でたい衝動がこみあげましたが、ぐっとガマン。
「バイバイ、お家へお帰り!」そう言って、手をパンパン! と鳴らすと、猫は驚いて早足で塀に飛び乗り、向こう側へ姿を消しました。
少し可哀そうな気がしましたが、仕方がありません。
ところが次の日も、朝、洗濯を干そうと庭に面したサッシを開けると、その猫は、庭にいました。
それも、まだ花が植わっていない花壇の土の上で、神妙な面持ちで「おトイレ中」。
それを見た瞬間、「あっ!」と思わず大きな声が出てしまいました。
猫は驚いて、ひとっ飛びに塀の向こう側へ逃走。
猫がいた花壇を見てみれば、いつもトイレに使っているらしく、落し物がゴロゴロ見えました。
ツンとした、独特の臭気も鼻につき、思わずため息。
困ったことにその猫ちゃん、家の花壇をトイレにしていたのです。
首輪はしているものの、どこの飼い猫かは分かりません。
隣の方に聞いてみても、最近よく見かけるけどどこの家の猫かは分からないそうです。
そこで、いろいろなグッズを導入し、「猫対策」を開始。
まずはホームセンターで草花の土を購入し、花壇の土を入れ換えました。
次に、ペットボトルに水を入れて置いておくと、光の反射を嫌った猫が近づかなくなるという話を聞きかじり、試してみました。
「どうかな?」と、少しわくわくしながら、朝、庭の様子を家の中から見ていると、なんと、猫はペットボトルを気にもせず、花壇で用を足しはじめました。
「ダメダメ!」と手を打ち鳴らし、猫を追い払いましたが、せっかく入れ替えた土の上には、猫の置き土産が......。
ガッカリしながら、少し多めに土を取って入れ替えましたが、この分では元の木阿弥です。
対策グッズの購入は引っ越し直後で色々物入りだった我が家には痛い散財でしたが、これも必要経費。
次なる作戦、市販の猫除けグッズの設置に踏み切りました。
期待を込めて花壇に敷いたのが、トゲトゲの猫除けマット。
これは確かに効果があったのですが、マットが敷いていない場所を狙ってくるので、これもまた失敗。
その後も、しばらく試行錯誤の攻防戦は続きましたが、ことごとく敗北しました。
もう手も足も出ない...と思っていた時...、3カ月くらいしたときでしょうか、なんと突然その猫は来なくなってしまったのです。
見事なまでの拍子抜け。
飼い主と共に引っ越したのか、それとも他にトイレを見つけたのか......。
少し寂しいような気がするのには、我ながら苦笑い。
今にして思えば、懐かしい思い出です。
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