インターンシップは「スタンプラリー化」している!? 参加率87.6%の学生が「本当に知りたいコト」

知りたいのは職場が「いい感じの雰囲気」かどうか

一方で、インターンシップを通じて「知りたかったことを知ることができたか」となると、71.5%が「できなかった」と答えたと、株式会社学生就業支援センターの「23卒夏期インターンシップ参加学生追跡調査」は報告している。

こちらの調査結果の方が、より素直な意見が表出した結果のように思われる。

その「知りたかったのに知ることができなかったこと」としては、「職場の雰囲気」が35.1%で最も多くなっている。さらに、その「職場の雰囲気」が「良いと感じた場面」については、「社員同士が仲良く話しているとき」とのことだ。

これについては、僕が日常的に学生と接している中でも、頻繁に耳にする。「昨日のインターンシップはどうだった?」と質問した際の返答で、最多のパターンがこの「雰囲気評価」だ。

「社員同士が仲良く話しているかどうか」は、ウェブ形式のインターンシップでも十分に伝わるようだ。画面越しに社員同士が仲良く、笑い交じりで会話しているのを見て、学生たちは「昨日の会社はいい感じの雰囲気でした!」と僕に報告してくれる。

具体的には? と聞いたところ、「上司の人が、画面越しにおにぎりを食べてるんですよ。で、それを部下の人が『部長、ちょっと何食べてるんですか!』って突っ込んでたんです(笑)」とのこと。

あ、そう。

しかし、インターンシップで知りたいことが「良い雰囲気の職場」かどうかで本当にいいのか。インターンシップって何のためにやるものだっけ。と、そんな疑問を抱かずにはいられない。

他方、上記のマイナビ調査によると、企業側にとってのインターンシップの課題は「学生のエントリー数が少ない」ことが最多となっている。そして、そのための対策として「学生がリラックスできる雰囲気づくり」が大きく票を伸ばしている。

つまり、企業側も「雰囲気評価」されていることをよく理解しているということか。

「雰囲気重視の仕事体験」傾向は、しばらく続くことになりそうだ......。

 

金間大介
金沢大学融合研究域融合科学系教授。東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。一般社団法人日本知財学会理事。北海道札幌市生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学経営情報学部、東京農業大学国際食科情報学部、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系、2021年より現職。主な著書に、『モチベーションの科学 知識創造性の高め方』(創成社)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)、『先生、どうか皆の前でほめないで下さい:いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)など。

※本記事は金間大介著の書籍『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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