【カムカムエヴリバディ】それぞれの「暗闇」から「ひなたの道」へ? 名ゼリフが響く回収劇の幕開け

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「描かれたそれぞれの暗闇」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】五十嵐のハグにSNS大盛り上がり! 本郷奏多さんの感慨深い「地続き感」とは?

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ラジオ英語講座を軸に、3世代ヒロインの100年の物語を紡ぐ、藤本有紀脚本のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』の19週目。

今週は、"モモケン"こと桃山剣之介の人気シリーズ・棗黍之丞の名ゼリフ「暗闇でしか見えぬものがある、暗闇でしか聴こえぬ歌がある」と、40年間時代劇で斬られ続けてきた伴虚無蔵(松重豊)が語った言葉「日々鍛錬し、いつ来るともわからない機会に備えよ」が対になり、響き合う週だった。

「暗闇」にいる筆頭は、五十嵐文四郎(本郷奏多)。

映画村の来場者数は減少、時代劇も衰退していく中、ひなた(川栄李奈)が企画した映画村のお化け屋敷は成功。

一方、五十嵐(本郷奏多)は相変わらず大部屋俳優としてくすぶり続けていて、師匠である虚無蔵に憤りをぶつける。

そこで言われたのが、先述の「日々鍛錬~」だった。

さらに五十嵐は、美咲すみれ(安達祐実)と『破天荒将軍』星川(徳重聡)の結婚報告に複雑な思いを抱いていたところ、居酒屋で二人にからみ、トラブルを起こしてしまい、1年間出演禁止に。

そこで役者をやめて東京に帰り、実家の会社で働くから一緒に来てほしいとひなたに告げる。

ひなたは役者を続けるよう明るく笑顔で励ますが、五十嵐は泣きながら「ひなたの光が俺には眩しすぎるんだ」と別れを告げるのだった。

五十嵐の夢を自分の夢と語っていたひなたもまた、突然の失恋で「暗闇」の中に。

そんなひなたにるい(深津絵里)が「On the Sunny Side of the Street」を歌い、五十嵐には同じく夢破れた経験のある錠一郎(オダギリジョー)が、自分で選んだ道がきっとひなたの道になるとエールを送る。

一方、「日々鍛錬」してきたのは五十嵐だけじゃない。

ひなたが外国人向けツアーを思いついた矢先、るいの英語力が発覚。

実はひなたがすぐにやめてしまったラジオ英語講座を、るいは17年間聴き続けてきたのだった。

また、今週の主軸であるひなたの弟・桃太郎(青木柚)は、幼い頃から11歳上の小夜子(新川優愛)を一途に思い続け、小夜子にふさわしい男になるため、勉強も野球も頑張って来た。

小夜子が勧めてくれた『サラダ記念日』になぞらえ、ささやかな喜びを「〇〇記念日」として日々鍛錬する姿が微笑ましかった。

しかし、野球で念願のレギュラー入りを果たし、「もし来年甲子園に出られたら」と小夜子に告白しようとした瞬間、吉之丞(徳永ゆうき)との交際が発覚。

全ての原動力だった小夜子に失恋したことで自暴自棄になった桃太郎は「暗闇」に落ち、練習にもいかずレギュラーを外され、挙句、英語を勉強しようとするひなたが所望するポータブルCDプレイヤーを恋敵・吉之丞の電気屋から盗んでしまう。

るいからは勤勉さと妄想好きを、錠一郎からはおおらかさを受け継ぎ、おまけに野球への情熱は叔祖父・勇(村上虹郎)から受け継いでいるように見えた桃太郎。

ここに来てまさか吉之丞の祖父・吉兵衛の荒物屋「あかにし」からラジオを盗んだ伯祖父・算太(濱田岳)と重なってくるとは。

日々の鍛錬が報われるとは限らず、誰にでも不意に訪れる「暗闇」。

今週は、そんな人間の哀しさ・おかしさ・愛おしさを桃太郎が一身に引き受けていた。

しかし、そんな桃太郎に対し、ひなたが7年も待った挙句に失恋し、それでも仕事はきちんとこなし、結婚資金を身にならない英会話教室に費やし...と姉弟で「あわれ合戦」を始めるところも、実に藤本有紀脚本らしい。

そして、鍛錬が報われなかった「あわれ王」と言えばあの人...錠一郎がとうとう夢であり、トラウマでもあるトランペットを手に、2人の前に立つのだ。

ちなみに、「あわれ合戦」は同じく藤本有紀脚本の朝ドラ『ちりとてちん』(17話)で、凄腕の借金取り「あわれの田中」(『カムカム』では「こわもての田中」の徳井優)のあわれぶりに対し、ヒロイン・喜代美(貫地谷しほり)が「一生懸命背ワタをとったエビを、人に炒められた」話で勝利し、「あわれのチャンピオン」となった展開のセルフオマージュだろう。

暗闇にいる人々に、虚無蔵の「どこで何をして生きようと、お前が鍛錬し、培い、身に着けたものはお前のもの。決して奪われることのないもの」が本当の意味で響いてくるのはこれから。

怒涛の回収は始まったばかりだ。

文/田幸和歌子

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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